岐阜県菓子店

2015.03.19

㈱恵那寿や(恵那市大井町)原昶

太古の昔より栗があったそうな

恵那寿や クリは、色形が多少異なっていても、全て一緒のものと思っておられると思いますが、クリもリンゴやミカンのようにいろいろな品種があり、性質にも違いが有ることをご存知でしょうか。世の中が、便利でより効率よくという方向に進化している現状において、クリも簡単に鬼皮や渋皮がむけるものが開発されています。

 9月の上旬に収穫される丹沢という早生の品種がありますが、この丹沢の改良種で、ポロッと渋皮がむけるクリが最近開発されました。名前もそのとおり、ポロッととれる丹沢〈ぽろたん〉と、名づけられました。評価はまだまだこれからですが、クリの研究が進んでいるのは楽しみの一つです。

 果実とひとつにくくられるなかにも、桃、梨、柿などのたくさんの木の実がありますが、その中でもクリは、種を食べる果実です。種は生きていくための力をたくわえ、子孫を残していく役割を担っています。ですから、クリにはカリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄などの人間の健康に欠かせないミネラルが、ほかの果物よりもたくさん含まれており、ビタミンもビタミンB1、B2が多く、1日に6〜7個食べると、ミネラルやビタミン、食物繊維など、一日あたりの大人の必要量が摂れるということです。

 会社の株主の中に、三名のクリ生産者がいらっしゃいます。その中に、恵那の地で四代にわたりクリを作っている方がおられますが、「クリというのは、簡単なようでいて意外と難しい。」と言われます。「新しい土地には、どのような品種でも、作り手が素人でも、クリはなりますが、クリの木も、同じ場所に二代、三代と、植え替えをしていくうちに、実がならなくなってしまうのです。土地改良を上手にすることで、四代にわたり、現在もクリを作りつづけてくることが出来た。」と、話されています。

 さて、クリはどのような栄養素を必要としているのでしょうか、落ちた実を私たちが食するわけですが、カラを食することはありません。そのカラを木の元へ返したら、クリも自分の分身が地中の栄養素となり、それを根が吸収し、また新たなクリに生まれ変わるのではないかと考え、クリの皮を栗林に戻す作業をしています。

 以前、青森県にある三内丸山遺跡に行って参りました。この遺跡の発掘により、今から5000〜4000年も昔の縄文と呼ばれる時代の人々が、クリを食して生活をしていたことがわかります。人々はクリの木を育て、1年のうちでも実りの秋を、楽しみにしていたのではないでしょうか。太古の昔より現代まで、クリは、すこしずつ進化しながら、私たち人間の命の糧として、秋には実る約束を違えることはありません。

原昶さん(左) 先代の原澄男は、木曽福島の出身であります。家業は、飴屋を基として菓子を作っておりましたが、縁あって、恵那へ移り住み、栗きんとんを作ってきました。この頃、栗きんとんの知名度はまだ低く、珍しいお菓子でありましたから、名古屋の料亭などより注文があり、飛脚便を使って納めておりました。まだ宅急便がなく、全国には郵便の速達にて送り、現在の宅配のはしりを行っていたわけでございます。

 栗きんとんは、栗と砂糖のみを使い、作るお菓子であります。先代はその栗にこだわり、クリを研究し、クリ林を育て、クリ一筋に生きてまいりました。その志を継いだ私も、クリ一筋の菓子作りに励んでまいりましたが、これからは、その意志を次の世代に伝えることが、私の勤めだと思っています。

 岐阜県菓子工業組合・原昶