視点

整合的な政策対応により菓子原料の安定供給を望む(平成27年3月)

現在の我が国においては和、洋、中華等、誠に多種多様のお菓子が製造販売されており、おそらくそのアイテム数を数えた人はいないであろうが、「お菓子は心の栄養」という言われ方もしばしば耳にするように、国民生活に不可欠なものであり、その豊かさを支える柱の一つとなっていることに異論はないであろう。特に心豊かな子供を育てる上で、その果たす役割は必要欠くべからざるものがあると思われる。また、普段の生活ばかりではなく、例えば、4年前の東日本大震災の際にも、すぐ食べられるお菓子はパンなどと並んで緊急時の食料としても重要な位置を占めるということが認識されたのではないだろうか。あの当時、被災地の菓子事業者は勿論のこと、全国各地の菓子事業者から多くのお菓子が被災者に提供され、心身ともに疲れ果て、空腹に苦しんでいた人々が口にしたお菓子の甘さに思わず笑顔を見せる光景は、テレビ等でもしばしば見受けられたところである。また、一般的にかさばらず、しかも日持ちがよくて栄養価の高いお菓子は、山岳で遭難した人の命を繋いだなどというニュースもよく聞かれるところである。

このように私たちの生活になくてはならないお菓子であるが、売上高が数千億円を超える大企業から老夫婦だけの零細業者まで、全国で4万とも5万ともいわれる多くの事業者によって日々製造販売されている。菓子業界にはいわゆる老舗といわれる業者も多数存在し、十四世紀半ばから連綿と続く老舗も存在する。わが国の菓子業界は、伝統的に身近な原料を多く使用してきており、国内農林水産業にとっても重要な顧客となっている。まさに、国内の農林水産業と菓子業界は基本的に共存共栄の関係にあったと言えるのではないか。
 最近、菓子業界は菓子の原材料の価格高騰と供給の不安定に苦しめられている状況にある。輸入が自由化され、国際相場が高騰、円安の影響を被ったものについてはある意味やむを得ないと言わざるを得ないが、国が国境措置等を通じて需給に影響を与えている原料については、国に適切な政策対応を求めざるを得ない。この関連で特に指摘しておきたいのは、このところのバター等の乳製品と加工用米の不足、価格高騰である。

バターについては、クリスマスの需要期にはスーパーの棚から消えるという事態まで招き、広く報道されたところである。もちろん国もただ手を拱いていたわけではなく、安定供給のために数次にわたり輸入を手当てしたところであるが、結果的に見れば適時適切な対応であったとは言いがたいものであった。ただ、乳製品については、国も今回の事態の反省に立って、今月号の記事でも取り上げたように、これまでは必要が生じた都度行っていたことから対応が遅れる結果を招いていた輸入の検討の時期を、1月、5月、9月の年3回と決めるとともに、これまでは25㎏のみに限られていたバターの輸入形状を洋菓子店等でも直接利用できる1~5㎏の輸入も行うように変更するなど、菓子業界の要望を反映した改善が行われており、菓子業界としてもその効果を期待しながら注視していく必要がある。

一方、加工用米については、生産者も菓子業界を含む実需者も政策対応に振り回されていると言わざるを得ない。平成22年産米では7,500円(玄米60㎏)水準であった加工用米の価格が、平成25年産米では12,000円まで6割も上昇し、平成26年産米では9,600円に引下げられたものの、市中ではこれを下回る主食用米が出回っている状況である。先月、全農は需要者に対し27年産米の加工用米の価格は9,600円に据え置くとの通知を一方的に行っている。26年産米の価格についても需要者団体としては、現下の米の需給価格状況を踏まえ見直しを要請していたところであるが、今回の決定はこれらの事情を全く考慮しないものであり、実需者業界としては誠に遺憾と言わざるを得ず、全国加工用米需要者団体協議会に加盟する8団体の会長・理事長名で全農の代表理事に見直し検討を図るよう申し入れしたところである。

ここ数年の生産者団体の言い分は、安定供給の重要性は十分認識しているが、生産者に安定生産してもらうためには所得が確保されるように配慮しなければならない。ある年には、政府備蓄米の価格が高くなり過ぎたので、比較して手取りの少ない加工用米は生産者が作りたがらない。またある年には、飼料用米の補助金が増えたので加工用米よりそちらが有利になってしまい、生産者に作ってもらうためには価格を上げる、または下げられないというものである。27年産米は、後者の例である。これからすると、すべて政府の政策が左右しているということになる。そもそも農政の大きな目標に掲げられているのは、自給率の向上であると思うが、膨大な国費を投入して自給率向上の効果の極めて低い飼料用米の生産を増やし、そのあおりで自給率向上効果の高い加工用米に対する需要を輸入米等に押しやるということが国内農業を支える道であろうか。菓子業界としても、できるだけ国内の原料を使用し、国内農林水産業を支えたいと考えている。しかし、一方で海外との競争が厳しくなっている事情もある。TPPの決着も気になるところである。国には、費用対効果を十分踏まえ、整合的な政策対応をお願いしたいものである。

 全菓連専務理事・山本領