視点

〝もったいない〟(平成26年10月)

食品ロス削減への取組を…

 世界の人口は現在72億人を超え、毎日20万人ずつ増加しています。国連の推計によると、2050年には90億人を超え、2100年には100億人を超えるそうです。そうなったときに食料は足りるのかというと、世界のすべての人が穀物主体の食生活をすれば物理的には不足はないとのことです。しかし、現実には穀物の配分が平等に行われるわけではなく、畜産物を多量に消費する食生活が新興国にまで広がってきていることも現実です。また、輸送、保存の問題もあって、現在世界の食料生産量の1/3にあたる13億トンの食料が毎年廃棄されているそうです。このため、現在でも8億人が栄養不足に直面する一方で、ワシントン大学健康指標評価研究所の調査によると世界の肥満者(BMI30以上)は6億7千万人に達しているそうです。

 ひるがえって我が国の食料消費の現状をみると、わが国では、1年間に約8,500万トンの農林水産物が食用に仕向けられていますが、それを原料として製造されたものを含め、食品関連業界と家庭を合わせて約2,800万トンが廃棄物などとして排出されています。もちろんそのすべてが無駄になっているわけではなく、その半分強の約1,450万トンは飼肥料やエネルギーなどに有効利用されています。しかし残り1,300万トン強は全くのごみとして焼却・埋め立て処理されています。この中には、可食部分と考えられる量が500~800万トン(うち事業系300~400万トン)あると推計されています。事業系廃棄物の発生原因は、規格外品、返品、売れ残り、食堂などでの食べ残しです。

 国は、せっかく生産、供給された食料の無駄を減らすために「もったいない」をキャッチフレーズに様々な取り組みを行っていますが、食品業界ではその一環として国の支援も受けつつ、平成24年度から「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を設け検討を行っています。平成25年度はその中間報告に基づき、趣旨に賛同する飲料大手5メーカー、菓子大手7メーカー、大手食品卸14社、大手スーパー・コンビニ9社が参加して、試行的に小売店舗への納品期限を現行の「賞味期限の2/3残し」から「1/2残し」へと緩和し、それによる返品や食品ロスの削減効果を検証するパイロットプロジェクトが実施されました。その結果、①小売の物流センター段階では納品期限切れ発生数量の減少、返品の減少により、②食品製造段階も納品期限の緩和によって、鮮度対応生産の削減、未出荷廃棄の削減が図られ、いずれも食品ロス削減につながる効果が示されました。③小売業の段階では、賞味期限180日以上の菓子については、販売期限切れによる廃棄増や値引きロスなどの問題は発生しませんでした。ただし、賞味期限180日未満の菓子については、納品期限の緩和により小売店舗での廃棄増などが出る場合が見られましたが、フードチェーン全体では食品ロスの削減効果がありました。

 この結果を受けて、取りまとめにおいては、賞味期限180日以上の菓子については、納品期限を「賞味期限の1/2残し」以下に緩和することを推奨し、各業界団体の協力を得て幅広い関係者に情報を共有し、各自の取り組みを促すとともに、賞味期限180日未満の菓子については、小売業で設定されている「販売期限」の延長と合わせて、納品期限の緩和を検討していくこととされました。

 菓子業界としては、全日本菓子協会を中心に、流通業界への協力要請はもちろんのこと、自らの課題として、食品ロス削減の観点から、①科学的な知見に基づく再検証によって、賞味期限の延長に取り組む。②賞味期限3カ月以上の商品については、①の取り組みと合わせ、賞味期限の「年月日」表示から「年月」表示への変更に取り組む。③流通業界、消費者等に対し賞味期限設定の考え方についての啓発活動に取り組むこととしています。なお、②の取り組みについては、流通段階における在庫管理の効率化に大きく寄与する波及効果もあります。さらに、家庭での食品廃棄の判断基準が「賞味期限」という表現によって影響を受けている面が見られることから、消費者に対する「賞味期限」の正確な意味の周知のための啓発活動の強化と併せて「賞味期限」そのものの表現のあり方についても見直しが必要ではないかとの考えのもとに、全日本菓子協会においてその表現のあり方について検討を開始することとされています。

 中小菓子業界においても「もったいない」食品ロスを少しでも削減するための取り組みが求められています。

 全菓連専務理事・山本領