各地の菓子店探訪
山口県菓子店の投稿

ロイヤルからヤクシジへ

新しい工房兼店舗をオープン

薬師寺隆さん 昭和48年創業の「ロイヤル」。思いの詰まったブランデーケーキをはじめ、先代の作る伝統的なお菓子の数々と46歳の薬師寺隆シェフが手掛ける創作洋菓子で、市民に広く親しまれているお店ですが、このほど宇部市イノベーション大賞を受賞し、市内あすとぴあに工房兼店舗「ヤクシジ」をオープンしました。土地は約390坪、建物約70坪。高台でロケーションが美しい場所にあります。雇用を生み、生産性の向上も図る菓子屋の革新として地元メディアに大きく取り上げられたこともあり、二代目としてさんさんと輝く薬師寺隆さんを訪ねてお話をうかがいました。

 宇部市イノベーション大賞とは、市内の産業団地において、革新的な事業を実施する事業者から事業計画を募集し、審査により認定し奨励金を交付する宇部市独自の制度で、新製品の開発や製造、新販売方式、新原料や新資源の採用を行い、地域生活に貢献する事業と判断できる事業計画は必須の条件です。すでに地域の特産をふんだんに取り入れた「あん」をパイで包んだ、おもちのきもちは代表的な焼菓子ですが、新工房と併設のカフェを取得することによって、より焼き立てのおいしいお菓子を提供することができるようになりました。カフェは、製造の慌ただしさを一切感じさせないしゃれたつくりで、500円で飲み物とお菓子を気軽に利用できます。おいしさ追求の高価なメニューもありますが、いずれはブランチや焼き立て商品を自由に楽しんでもらうカフェにしたいと思っています。

 現在の最重視は、東京での百貨店販売。山口から東京へブランデーケーキを筆頭に月に約一週間程度、人海戦術で臨んでいます。資金力のない地方の菓子店が東京での対面販売によってクチコミを広げ、ネット販売につなげていく。チラシを配り、試食を渡して直接おいしさやこだわりを伝えていく。当然、宿泊交通費、送料や手数料など費用も、少々ではなく簡単ではありませんが、攻めの態勢で臨んでいます。また顧客動向や消費傾向など、回を重ねるごとにつかんできました。さらに百貨店とのパイプにより、小回り重視で後発ならではのやり方で、やっていきたいと決意を新たにしています。

 自身の時間の中で一番多くを占めるのは、商品開発でオリジナル性も大切にしながらお客様の価値にマッチするか考えます。会社の皆と製造にかかる時間や販売方法まで検証し、一体感を持って取り組みます。作ったら売れる製造主導の時代は終わり、商品を売れる人や仕組みが主導権を持つ時代になりました。今までのやり方では、大手に敵わないと危機感を感じながらも、菓子屋を変えるのは私たち40代50代だと言います。

 商品にひとことストーリーを作って、伝達しやすくする。商品にはプロローグがある。どの店にも他店に勝っている何かがある。大手にはできないこと、家族経営でもできないことを模索しながら、新工房の完成を機に、より充実した菓子屋としての毎日を過ごしていく薬師寺隆さんでした。

 山口県菓子工業組合専務理事・恒松恵子

店舗データ

ヤクシジYakushiji ヤクシジ
宇部市あすとぴあ1-2-4
電話:0836-53-2233
http://www.so-royal.com/

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