愛知県菓子店

2014.09.18

川村屋賀峯総本店

繁盛店訪問

京菓子司 川村屋賀峯総本店 平安時代に尾張の国の「一の宮」があり、古くから繊維産業都市として知られる一宮市。

 その一宮市の南西部にある「京菓子司 川村屋賀峯総本店」様を訪ねました。

 江戸時代末、現在の稲沢市に創業した「松屋甚兵衛」という菓子屋が前身。三代目は、明治時代に大蔵官僚になったことから一時、菓子屋を廃業。その後、現店主の父親が昭和三年に現在地で「川村屋賀峯」と改名し新たに創業。現在は二代目店主の原鉦三氏と、その長男ご夫婦と五名のパート従業員で、お茶会の菓子を中心に、地元はもとより、遠方の茶人からの注文にもこたえています。

 店舗向かいにある本格的な茶席へ通されお話を伺うことになり、数寄屋造りの門をくぐり敷石を踏みしめながら中へ進むと、事前に庭には打ち水がされ木の葉の隅々までもみずみずしく、和菓子職人でありながら茶の湯の席主をも務める店主の細やかなおもてなしの心遣いを感じました。

 建物は店主好みの設計で、畳廊下伝いに、八畳の寄付きと、隣の八畳は表千家惺斎宗匠好みの松風楼の写しの席、廊下伝いに、水屋、吉田紹村宗匠の命名の小間「餘楽庵」(昭和十八年造)があります。梅軒門やにじり口、別室には立礼席もあり本格的な茶事、茶会が出来る設えです。

羽二重餅 通年の人気商品としては先代より伝わる、季節により形や中餡、色など豊富な種類の「羽二重餅」があります。お抹茶で頂きましたが、ふんわり柔らかな中にもコシのある生地は、小豆との相性も良く、評判通りの味です。稲沢市にもマスコミなどに取り上げられる羽二重餅の人気店があり、その店のルーツも先代から屋号を命名してもらい独立したとの事ですので、まさに「羽二重餅」は、川村屋賀峯を代表する銘菓ということです。

 店主の原氏は茶の湯と五十年以上にわたり関わり、自らの茶道具で茶会や茶事を催しておられ、和菓子職人としては全国的にも数少ないお茶人でもあります。せっかくの機会ですので、本当の意味でのお茶に使えるお菓子についてお話しいただきました。

 お茶のお菓子については「茶の引き立て役」という立場から「菓子の材料が本来持つ風味を損なわないよう十二分に吟味して心をこめ、心配りをしながら手作りするのが、和菓子屋の自分の仕事と思っています。具体的には濃茶、薄茶のお菓子の使い分け、菓子器との色合いとか調和、取り合わせ。お菓子銘はどんな銘を付けるとか。口の中へ入れて食べやすい、ほどほどの柔らかさ。姿、形、意匠は特別な飾り付けをしないように、自然体ですっきりした菓子を心がけています。そして甘さ加減。香りの強すぎるものや、色合いのあまりに鮮やか過ぎるものは相応しくないと思います。趣向によって雅な華やいだ感じの茶菓子、時には野趣のある詫びた風情の菓子。折々、春夏秋冬、見た目も口に入れても上品な和菓子作りに真心を込めて精を出したいです」とのこと。

 店舗の数倍はある広さの作業場には、ステンレス作業台が八台設置され、手入れの行き届いた道具類が整然と並んでいます。「販売」より「製造」というお客様からは見えにくい部分を大事にされている姿勢が伝わってきた気がしました。

 道具類は、ほとんどを日光消毒し、生地に匂いや余分な水分が付着しないように風味を大事にするとともに、衛生面にも細心の注意をしているとのこと。

 愛知県菓子工業組合・近田大輔