視点

食品表示ルールの確立を願う!(平成26年7月)

消費者、食品関連事業者を信頼で結ぶ

 食品表示基準(案)のパブリックコメントが7月7日~8月10日までの期限で始まった。食品表示については、昨年6月28日それまで食品衛生法、JAS法など複数の法律に跨っていた規定を一本にまとめた食品表示法が公布されたところである。食品表示法は、単にこれまでの法律の規定をまとめただけではなく、これまでは任意表示とされていた栄養成分表示の義務化など新たなルールが盛り込まれている。またこれら事項を表示する際に食品関連事業者が順守すべき事項については内閣総理大臣があらかじめ厚生労働、農林水産、財務大臣に協議するとともに、消費者委員会の意見を聞いて表示の基準を定めることとされている。法の公布後、消費者庁と消費者委員会食品表示部会により食品表示基準の策定に向けた検討が続けられていたが、去る6月25日の食品表示部会にその案が示された。食品表示法はその公布後2年を超えない平成27年年6月28日までに施行されることとされており、消費者庁では、食品表示基準については周知期間を考慮すれば同年4月1日までには公布する必要があるとしている。食品表示は、アレルギーなど消費者の健康に直結する情報だけでなく、消費者の商品選択に資する情報を提供するものであり、その役割が極めて重要であることは論をまたない。その際留意すべきは、先ず消費者が一見して必要な情報が得られるように、見やすくかつ分かりやすいものでなければならない。同時に、罰則を伴うこととなる義務表示事項の表示ルールについては、中小零細業者が極めて多い食品業界の実情に照らした場合、事業者サイドで本当に実行可能か否か十分な検証が不可欠であろう。その必要性を多面的、総合的に比較衡量することなく、多多益々弁ずという理念に走りすぎると、仏作って魂入れずではないが、いたずらに罪人を生み出すことになりかねない。こういった観点でみた場合、食品表示部会でまとめられた食品表示基準案には、いくつかの重要な問題点がある。

 第一に、栄養成分表示の義務免除事業者についてである。「食品表示一元化検討委員会報告書」においては「すべての事業者を対象とするが、例外として、家族経営のような零細な事業者に過度の負担がかかるようであれば適用除外とすることが適当である」とされており、3月26日の栄養表示に関する調査会の中間報告までは「正社員及び正社員に準じた労働形態である従業員5人以下の業者」とされていたが、最終段階でいきなり「課税売上一千万円以下の消費税納税義務免除者」とされた。このような経営では、後継者の確保は出来ず家族経営の名に値しないものである。配慮すべき家族経営の姿としては、後継者世代が確保され、パートを含めた少数の従業員がおり、これに見合う売り上げが確保される経営ではないか。こういう観点からすれば、もともと示されていた「正社員及び正社員に準じた労働形態である従業員5人以下の業者」又は「(消費税の簡易課税の基準である)課税売上五千万円以下」に該当する事業者とすることが適当ではないか。

 第二に、栄養成分表示に「義務」と「任意」の中間概念として「推奨」が新設され、飽和脂肪酸と食物繊維が対象となっていることである。消費者庁は義務ではないとしつつも、基準案では「表示を積極的に推進するよう努めなければならない」と努力義務を課している。推奨という位置付けでは大手小売などの取引業者から表示を求められ、事実上義務と変わらないものとなる可能性が高く、消費者の得る利益とのバランスが取れないのではないか。義務表示事項以外は従来通り任意とするべきではないか。

 第三に、製造所固有記号制度の見直しである。消費者庁の案では、表示責任者たる「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」と並んで「製造所又は加工所の住所及び製造者又は加工者の名称」を表示することとなっており、当該食品が2ヶ所以上で製造される場合を除き現行の製造所固有記号は使用できないこととされている。そもそも食品衛生法で両方の記載が義務付けられていたのは、食品衛生事故が発生した場合に適切な対応を行うための行政目的によるものであるが、そのまま実行すると事業者の負担が大きくなりすぎることに配慮し、それに代わるものとして製造所固有記号制度が設けられてきている。また国際的にも表示責任者としていずれか一つを記載すればよくなっている。固有記号の管理に問題があるのであれば、その手当をしっかり行い行政目的に資するとともに、消費者の要望にも応じうるようにするべきである。1ヶ所の製造所しか持たない中小零細企業の経営に新たな負担をかけるような制度の見直しは、公平性の観点からも問題が大きい。

 第四に、今回の改正により義務表示項目が増加したにもかかわらず表示義務免除に係る包装容器の面積が30㎠に据え置かれていることである。基準案では、消費者の商品選択に資するという食品表示の役割にかんがみ「容器包装を開かないでも容易に見ることができるように当該容器包装の見やすい個所に表示する」とされているが、現状でも極めて小さな活字で高齢者には判読不能であったり、印字部分が包装の都合で折り重なったりしたものがみられる。高齢化が益々進行する中で表示項目を増やすのであれば、当該面積は少なくとも50㎠に拡大すべきであろう。

 新しい食品表示が消費者と食品関連事業者双方の理解と協力により、その間を強い信頼で結ぶものとなることを願ってやまない。

 全菓連専務理事・山本領