お菓子のレシピ集
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黄味時雨

黄味時雨B・Pと寒梅粉の使用を【黄味時雨編】

 日本の四季にはそれぞれに風情がありこの風情を生かした和菓子があります。この和菓子は幼い思い出から大人になっても心のふるさととして息づいています。和菓子を時代に即した商品に育てるため、今一度掘り下げて考えてみました。

 日本の季節の変わり目は、雨の呼び名で始まる。冬から春へ雨は「春雨」。しとしと降る雨は心を広げて浮き浮きとさせる。春から夏への雨は、梅の実が稔る頃の雨で「梅雨」(ばいう)(つゆ)ともいわれ、紫陽花が美しい季節を想像される。夏から秋への雨は緑葉から紅葉への移り変わりの雨で、稲穂の稔りへ感謝の雨ともなり「時雨」となる。秋から冬への雨は「村雨」となり(村雨は馬の背も分ける)と詩われ、断続的に降る強い雨とされる。

夏から秋への雨を表したお菓子

 黄味時雨は夏から秋への雨を表したお菓子で、しっとりと心落ち着かせ、穏やかな風情を醸し出してくれる。終戦前は「技術は盗め」といわれ、理論的な伝えは無かったと言う。何故、餡に細やかなひびが出来るのか。餡の硬さと餡に加える上新粉、少量のイスパタが鍵となり、これを会得するのに五年あるいは十年の奉公を必要としたとも言う。餡が蒸すと割れるこの技術を会得するための奉公であり、会得した技術は他人に教えない。現在では配合は工場に大書きされ、菓子の辞典、製法書が低価格で販売されている。また、訓練校、製菓学校の出現で配合、理論は短時間に覚える事が出来る。自分が解らなければ、電話で気軽に配合を尋ねても、低姿勢ならば多くの場合、教えてもらえる。こんな時代は技術の値打ちは薄れるが、美味しいお菓子を作りたいと情熱を燃やすことで、新しい日本の風土にふさわしいお菓子を作り出すことが出来る。

製品は低温保存(18℃前後)で二~三日

 黄味時雨は従来蒸し菓子であるためイスパタを使用していたが、イスパタは漂白作用があり、黄味色が薄れるので、B・Pを使用した配合Bを薦めたい。また、従来は上新粉が当たり前であったが、五~六分の蒸し時間では上新粉が完全に蒸し上がらず、二目目、三日目にはポロつき食べにくい傾向にあった。配合Bはα化した寒梅粉を使用しているので三~四日してもポロつきがなくしっとりと仕上がる。出来ることなら製品は低温保存(18℃前後)で二~三日としたい。

◎配合A

白生餡……………… 1000g
グラニュー糖…………630g
水………………………300ml
卵黄……………………… 3個
上新粉 ………………… 45g
イスパタ………………… 3g
卵黄……………………… 1個

◎配合B

白生餡……………… 1000g
グラニュー糖…………630g
水………………………300ml
卵黄……………………… 3個
寒梅粉 ………………… 42g
BP……………………… 3g
卵黄……………………… 1個

・中餡
小豆こし生餡……… 1000g
グラニュー糖…………600g
水………………………350ml
ハローテックス ……… 50g
食塩……………………… 2g

蒸し時間は六分以内で

◎工程

①白生餡、グラニュー糖、水で糖度55度の火取り餡を練る。

②ゆでて絹フルイに通した卵黄三個を加えて練り上げる。

③②の練り餡が完全に冷めてから、生の卵黄を手で混ぜ合わせる。

④上新粉、イスパタを加えて混ぜる。

⑤硬く絞ったぬれ布巾で手を湿らしながら26gに切る。

⑥中餡は糖度55度に練り上げて冷めてから16gに切る。

⑦⑤の生地で⑥の中餡を包み丸腰高に整える。

⑧セイロにぬれ布巾を敷き、さらにざら紙を敷き、⑦を並べる。

⑨中位の蒸気で6分蒸し上げる。
*配合Bは多少軟らかめの53度位に餡を練って、ゆでた卵黄を加えて混ぜ合わせる。
*練り餡が冷めてから、生の卵黄を加えて混ぜる。
*寒梅粉、BPを加えて軽く混ぜ合わせる。配合Aに比べて多少軟らかく生地こねを合わせる。
*蒸気は配合Aより弱い蒸気で、五分蒸し上げる。配合A・Bとも同じであるが、七分以上蒸すと表面に白い斑点が出来るので、蒸し時間は六分以内で蒸し上げる。

生地二色で、ひび割れから別の色合いを
*BP使用の配合Bは、黄色が強い製品となる。
*応用品としては、生地二色にして、ひび割れから別の色合いがのぞめる方が、商品価値は高い。
*表面になる生地を10g。着色した紅生地16gを半包みにして中餡を包み、丸腰高に整えて五分位で蒸し上げる。
*配合B生地は蒸気が強いと割れ過ぎるので、特に弱い蒸気で蒸し上げる。

専修学校 日本菓子専門学校 和菓子教師 鎌田克幸 氏
和菓子講習より

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