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練り切り上生菓子

練り切り上生菓子並餡の練り方で味が決まる【練り切り上生菓子編】

 日本の四季にはそれぞれに風情がありこの風情を生かした和菓子があります。この和菓子は幼い思い出から大人になっても心のふるさととして息づいています。和菓子を時代に即した商品に育てるため今一度掘り下げて考えてみました。

 日本の自然の美しさを、そのままに表現出来る練り切餡。季節の風情を写実的にそして抽象的に作り上げる事も、また、その製品から技術者の技量を読み取れるとも言う。和菓子の職人を目指す若者は先輩職人の指先から生まれる芸術品を真似ようと必死に努力をする。東京では和菓子の研究団体が毎月持ち寄り研究会を開催。新人からベテランまで季節を表現した作品を持ち寄り、技を競い合う。通常の仕事を終えて数時間、時には夜明けまで黙々と和菓子の技術の試行錯誤に掛ける。これが二日、三日と続けてやっと作品が出来上がる。これを毎月続けてそして三年、五年と歳月を掛ける。

 これほどに奥が深く、魅力ある和菓子作りが出来るのも練り切餡があればこそ。この練り切餡も見た目の美しさを求めるばかりでは、お客様に逃げられてしまう。食べて美味しく、見た目に美しい製品作りこそが魅力なのである。戦後まもなく、火取り餡に味甚粉をもみ混ぜた製品も見受けられたがいつしか消えてなくなり、薯蕷練り切、牛皮つなぎの練り切が残っている。牛皮つなぎ練り切のおいしさは、元になる並餡の練り方で味が決まる。白く練り上げたいばかりに水を少なくして練り上げた餡は、見た目に良くても味は良くない。また、酸糖化水飴の使用した練り切は後味がくどくなる。

 一度にたくさんの餡を練るのも色焼けの原因となり、定量の半分で練る方が良い練り切り餡となる。生餡10㎏練る練り鍋(サワリ)であれば5㎏、20㎏の練り鍋であれば10㎏で練り上げるのがよい。つなぎの牛皮は蒸し練りならば羽二重粉、水練りならば白玉粉を用いて倍割に練り上げて、仕上げの硬さによって加減する。麺棒延ばし仕上げ用には生餡の12%、木型仕上げには生餡の10%、布巾絞り仕上げには生餡の9%を基準に使用する。練り切り上生菓子は日持ちがしないお菓子で餡のつやが命となる。練り切餡を温かい内に着色して完全に冷ます。中餡も饅頭の中餡ではなく、練り切用の硬めの中餡を使用する。練り切り上生菓子は濃い目で、温めのお茶で味わっていただくことを消費者に薦める。

●配合A

白生餡 ………………5000g
グラニュー糖 ………2600g
水 ……………………1000g
ハローデックス………500g
牛皮(倍割り)………500~600g

・中餡
小豆こし生餡 ………2500g
グラニュー糖 ………1450g
水………………………750g
ハローデックス………200g
食塩……………………… 3g

●練り方

①グラニュー糖に水を加えて加熱する。

②沸騰したら生餡、ハローデックスを加えて練る。

③適度な硬さになったら牛皮を加えて練り混ぜる
*布巾絞り仕上げはブリックス糖度55度位の時、牛皮を加える。
*木型仕上げの場合はブリックス糖度57度、延ばし仕上げには60度位に牛皮を加えて練り混ぜる。
*冷めると糖度は3~5度高くなる。

④練り上げたら取り板の上に上げて冷ます。

⑤荒熱が抜けるまでに2~3回もみ混ぜて皮張りを防ぐ。

⑥着色をしてビニールに包んで寝かす。
*夏場は冷蔵庫、冬場は常温

⑦仕上げは、冷水で手や布巾を冷やしながら手早く行う。
・写真左から右へ

○一月・やぶこうじ
白15g、淡い緑15g、中餡15g、本紅練り切少量
*淡い緑と白を一部重ねて中餡を包み上げ茶巾で絞り上げ、中央に本紅の実を添える。

○二月・香梅
白12g、淡い赤18g、中餡15g、黄味色の芯
*白で淡い赤を半分包み、中餡を包み上げて茶巾で絞り更に絞り上げた茶巾を押し付けて窪みを作る。窪みにフルイに通した黄味色の芯を添える。

○三月・都忘れ
白12g、淡い紫25g、中餡15g、黄味色芯
*白で紫を半包みにして中餡を包み丸腰高に整え、三角へらの二本線を下から上に押し付ける。硬く絞った絹布巾を掛け中央を押し棒で押し、黄味色の菊しべを押し棒で押し付ける。

○四月・春の山
白12g、緑6g、黄味色6g、赤6g、中餡15g
*白で緑、黄味色、赤を半包みにして中餡を包み上げる。丸腰高に整えて茶巾で絞り上げる。

○五月・杜若
白12g、赤紫20g、中餡15g
*白に赤紫を重ねて中餡を包み上げ、丸腰高に整えて中央に黄味色を丸めて押し付け茶巾で絞り上げる。三角へら二本線を三カ所に押し付ける

○六月・笹舟
緑50g、白50g、中餡20g
*緑を直径3㎝に延ばし一方を手で押さえて三角にして、2本に切る。白20gを3㎜厚に延ばして緑を重ねて笹の芯にする。別の白を2㎜厚に延ばして外面を覆う。軽く寝かせてから3㎜厚に包丁して切り口を千筋板に押し付けて、中餡に巻き付ける。

○七月・河原撫子
白12g、淡い赤18g、中餡15g、白の芯
*白で淡い赤を半分包み、中餡を包み上げて茶巾を上から掛けて下でしっかり止め、中央を箸の裏で押し付けて窪みを作る。三角ヘラで五弁に筋を付け、更に3本の筋付ける。中央の窪みにフルイに通した白の芯を添える。

○八月・夏菊
白12g、赤紫18g、中餡15g
*白で赤紫を半包みにして中餡を包み上げる。丸腰高に整えて三角ヘラで16本の筋目を付ける。箸の裏で交互に押し付ける。中央に淡い黄菊芯を押し棒で押し付ける。

○九月・稔り
黄緑50g、中餡10g
*黄緑を「おだまき」に入れて金網に押し付ける。三本位を敷き、中餡をのせる。中餡を覆うように積み上げはしでつまみ切る。三角へらの二本線を押し付け、稲穂を表す。

○十月・秋日和
橙色10g、黄味色18g、中餡15g、濃い緑2g、小豆こし並1g
*橙色で黄味色を半包みにして中餡を包み上げる。硬く絞った絹布巾を掛け、下の方でしっかり締め、中央を箸で押す。緑に小豆こし並餡を混ぜてヘタを作り、丸めた布巾で中央を押す。 

○十一月・冬支度
白10g、半小豆20g、黄味餡13g
*半小豆で白を包み上げる。硬く絞ったぬれ布巾の上で直径1㎝の棒状に転がしながら延ばす。4、5㎝に切って底に3本位置き中餡を乗せ、中餡を覆うように積み上げ三角ヘ
ラ二本線を中央に押し付ける。

○十二月・山茶花
白18g、淡い赤12g、中餡15g
白の中央を軽く窪ませ、淡い赤を押し付けて中餡を包み上げる。絞り布巾を掛け下の方でしっかりと絞り右手で中央から端を軽くつまんでしねる。布巾を外し窪みに黄芯を植える。

専修学校 日本菓子専門学校 鎌田克幸 氏
和菓子講習より

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