兵庫県菓子店,各地の菓子店探訪

2014.06.16

芦屋 柳月堂 玉川

薫る街からの風菓子

芦屋カステラ 兵庫県芦屋市、そこは関西でも有数の高級住宅街で知られる。平安時代「伊勢物語」では、六歌仙のひとり在原業平と思われる主人公が芦屋に住み、京都からやってくる人々を「布引の滝」に案内したと記される。このほか「芦屋」の名は「万葉集」など度々古典文学に登場する。

 時は経て、明治維新以降は、廃藩置県など数度の行政区域の変更を経るが、特に交通機関の発達により(明治38年阪神電車、大正2年国鉄、昭和2年阪急電車が開通など)田園風景が広がる農村であった芦屋は、阪神間の近郊住宅として目覚ましい成長を遂げる。

 今回は、そんな芦屋の中心地であるJR芦屋駅前にある「芦屋 柳月堂 玉川」の2代目店主、安達文輝さんを訪ねた。創業者の先代、安達一郎氏は、福岡県柳川市のご出身で、16歳のとき、長崎にでて長崎屋で修業される。20歳の時、兵庫県神戸市に出て、長田区の「栄太楼」で働き後に工場長となる。そして、昭和30年23歳の時に神戸市中央区熊内橋通りにて「柳月堂玉川」として創業された。その後、芦屋にも出店し2店舗で営業する。

 当代の文輝さんは、大阪の銘店「住吉菓庵 喜久寿」で18歳から修業し、23歳の時から先代のもとで修行を続け、30歳の時「芦屋柳月堂玉川」としてお店を継がれた。

 お店には「芦屋風菓撰」と名付けられた進物菓子9種と、25種にも及ぶ朝生菓子がところ狭しと並んでいる。その中で全菓博名誉総裁賞受賞の「芦屋カステラ」は、「ふんわり」とした食感と「しっとりさ」を両立させるため、2種類の卵を使用したこだわりのカステラである。淡路島の朝採り卵はふんわりして「浮き良く」焼き上げるために、また加古川「日本一のこだわり卵」は「しっとりさ」を出すために使用しているとのこと。先代からの「カステラ」に対するこだわりを強く感じる。そのほかには、大粒の栗を蜜漬けにし、白あんで包んで焼あげた「芦屋マロン」、ふっくらと焼き上げた生地に、自慢のあんこを合わせた、どら焼き「のぞみ月」など、どれも伝統の技術を大切に活かし、口の肥えた芦屋の人々を満足させるものである。また、朝生も和歌山県産のはっさくを使用した「はっさく大福」、創作和菓子「芦屋ぷりん大福」など充実している。さらに、昔からお餅の評判も高く、毎年年末にはお餅を1日10、000個以上つくり、1、000人近くのお客様の行列ができるそうだ。

 今年度、兵庫県菓子工業組合青年部長に就任。神戸生菓子経営研究会や、神戸市生菓子協会、大阪二六会などで技術の研鑽や情報交換を怠らない。そんな文輝さんの10年後の夢を聞いてみた。

 「四男一女、五人の子供に恵まれたので、五人の子供と一緒に商売していけたらなと思います。継いでくれるか、わからないけどね(微笑)」。

 谷崎潤一郎の長編小説「細雪」の舞台となった芦屋。そんな、歴史と上質感を大切にする街で、長くお客様に支持されていることに深い感銘を受けた。

 近畿ブロック長・中島慎介

店舗データ

安達文輝さん芦屋 柳月堂 玉川
兵庫県芦屋市大原町9-1-0026
ラポルテ東館B1
電話番号…0797-22-0175
営業時間…10:00~19:00
水曜定休