視点

少子高齢化と菓子の需要を考える(平成26年4月)

食品の需要拡大を論じる際に必ず言われるのは、入る口、腹は一つということである。しかし現在は、人の口の数が減少して行っている。もちろん、急に減少するわけではないが、じわりじわりと確実に減少していく。国立社会保障・人口問題研究所の推計(出生中位、死亡中位)によると2010年1億2,806万人の我が国の人口は、50年後の2060年には8,674万人と、4,132万人の減少、率にすれば▲32・3%減少するとしている。

この間の人口構成の変化、いわゆる少子高齢化の影響はおくとしても、このままでは菓子の需要が絶対的に減少することは避けられない状況である。

これへの対策は、すぐに効果の出る対策と中長期で効果の出る対策に分けて考える必要がある。前者としては、海外からの観光客の増加を図ること及び輸出に取り組むことであろう。政府も観光立国をうたい文句にその推進に取り組んでおり、13年はアベノミクスの効果で行き過ぎた円高が是正されたこともあり、初めて1000万人を達成したとのことである。しかし、12年の数字で国際比較をみると、日本は836万人で第33位、1位のフランス8300万人、2位の米国6700万人、3位中国、4位スペインの5700万人には遠く及ばないのはもちろん、お隣の韓国23位1114万人にすら後れを取っている状況である。しかしこれは、政策次第では伸びしろが大きいということでもある。20年のオリンピックに向けて、官民一体となった取り組みが求められる。菓子業界としても、せっかくの機会を逃すことなく、我々の得意とする「おもてなし」により、多くの観光客に日本の美味しいお菓子を是非とも味わってもらいたいものである。

そのことは、もう一つの口の数を増やす手段である輸出の振興につながるものである。アジア地域では近年の経済成長により、富裕層の増加が著しいものがある。これまでは、わが国との経済格差が大きく、わが国の高品質ではあるが高価格な食料品の需要層は限られていたが、現在では高くても安心できるもの、美味しいものを求める需要層が十分育っており、日々拡大している。国も、これまではほぼ輸入一方であった食料品の輸出に力を入れてきており、菓子業界としても海外の需要を取り込んでいくことが可能になっているのではないか。

後者の中長期で効果の出る対策は、少子化対策である。少子高齢化問題として論じられる場合、ともすれば高齢者の社会福祉をどう支えていくかということが中心に置かれがちである。もちろん、それも必要であるが、高齢化ということ自体は生命としての自然現象であり、政策手法としては対症療法ということになるのではないか。一方、少子化ということは、一人ひとりの国民の選択の結果であり、政策的に個々の国民の選択に影響を与えることができれば、その状況は変えることができるということである。国家百年の計を考えた場合、対症療法は施しつつも、抜本的な少子化対策、体質改善を最優先で講じるべき時に立ち至っているのではないか。

少子化は先進国共通の問題であると言われるが、先進国でもフランスは94年に1・66まで低下した出生率をさまざまな政策により、06年には2・0まで引き上げることに成功し、12年は2・01となっている。スウェーデンも99年に1・5に低下した出生率を10年には1・98、イギリスも01年に1・63まで低下した出生率を10年には1・98まで引き上げに成功している。各国とも様々な知恵を絞って対策を講じており、それらが効果を上げているのであろう。その詳細は、各国ごとに様々であるが、共通しているのは、労働体系の変化、婚姻概念の変化、シングルマザーの増加、婚外子の権利の保護、教育のあり方、税体系のあり方等、まさに国家・社会のあり方を大きく変える事態となっている。鶏と卵の関係かも知れないが、国情の違いはあれ、そのような変化に適切に対応した政策を講じてきたからこそ、出生率の回復を実現できたのであろう。

例えば、フランスの対策の中には、子供を3人以上養育したら年金が10%加算されるというものまであるとのことである。わが国においても、少子高齢化で年金制度が維持できないと議論されていることからすると、これは非常に理に適った対策ではないかと思う。現在の日本の賦課方式の年金制度の下では、その子供たちが祖父母、父母世代の年金を支えることとなっている。一方、子供1人の4年生大学卒業までの費用は、同じ2005年の調査で、民間保険会社調べで約3000万円(全て国公立)、政府調査で約1300万円となっている。どちらが実態に近いのか議論はあろうが、子供を育てることにより得られる幸せはあるにしても多額の負担であり、少子化の大きな原因となっているであろう。社会制度全体を見た負担と給付の関係からしても公平なものであろうか。

また、子育ての前に、未婚者が増加している。これには経済的要因と社会的要因があるが、適齢期の男女が安心して結婚できるような経済環境を生活の場としての地域から形成するのは専ら政治の責任であろうし、昔は地域の世話役が果たしていた仲人役ももっと行政が役割を果たすことも必要ではないか。その他にも、シングルマザーの子育てをどうアシストするか、さらに結婚は希望しないが子供は欲しいという女性の希望を不安なくかなえるシステムを検討する必要はないのか。子供は社会の宝などという単なるお題目ではなく、子供を育てることが負担感ではなく、大きな喜びとなるような社会づくりが求められているのではないか。今月から、消費税が引き上げられたが、政府はその使い道の一つとして子育て、少子化対策を上げている。まさに国家百年の計として、その充実を図っていただきたい。他国に出来てわが国に出来ない理由はないと思う。

 全菓連専務理事・山本領