視点

お菓子と「お・も・て・な・し」(平成25年10月)

おもてなしの心と表示を考える

安倍総理が来年4月からの消費税3%引上げを決断された。同時に、景気の腰折れを防ぎ、15年に及ぶデフレの長いトンネルからの脱却を確かなものとするために、3%の引き上げによる税収増約8兆円のうち、2%分に相当する5兆円規模の経済対策を実施することも決定された。総理が引上げを判断する際の重要な指標とされていた今年4月から6月の経済成長率が、8月に発表された速報値では年率換算2・6%であったものが、9月の確報値では同3・8%と大きく改善されたことが、一つの理由であろう。もう一つの理由は総理自らブエノスアイレスに赴かれ、IOCの総会において2020年のオリンピックを東京に誘致するための演説を行い、これが高く評価されて見事誘致に成功したことであろう。誘致決定後のマスコミ報道等を見ると、多くの国民が明るいニュースとしてこれを受け止めている。前回1964年の東京オリンピック、まさに日本が戦後復興を遂げ、世界の奇跡と評された高度成長時代に突入し、国民誰もが明日への希望を感じていた時代であった。勿論、今回は時代背景も異なるが、長いデフレのトンネルの中でずっとうつむき加減であった国民が、やっとトンネルの出口が見え、光を感じ出したということではないか。しかしながら、現在の景気回復はまだまだ一部にとどまり、国内の隅々まで届くというには程遠い状況である。総理自身が発言されているように、今この時はわが国が復活する最後の機会であると思える。総理には引き続き強いリーダーシップを発揮され、様々な既得権益を守ろうとする雑音に惑わされることなくご自分の信じる道を進んでいただきたい。日本を取り戻すという総理の挑戦が成功するためには、われわれ国民も、自らが選んだリーダーを信じ、力強く支える必要があると思う。

オリンピックの誘致でもう一つ印象的かつ効果的だったのは、滝川クリステルさんの手ぶりを交えた「お・も・て・な・し!」であった。円高の是正によりこのところ海外からの観光客が増加してきているが、オリンピックの誘致が決まったことから一段と増加することが期待されるところである。海外からのお客さまの「おもてなし」に欠かせないものの一つがお菓子であろう。美味しいお菓子は、すべての人の心をなごやかにする力を持っている。菓子業界としては、それぞれが創意工夫と匠の技によりをかけたお菓子で海外からのお客様に喜んでいただき、日本の「お・も・て・な・し」を支えたいものである。

ところで、「おもてなし」とはそもなんであろうかということを考えてみるに、お客様にくつろいだ気持ちのいい時間を過ごしていただくために、お客様の立場になって誠心誠意、正直に、裏表なく接遇するということであろう。まさに一期一会の心であろう。その際、菓子業界がいわゆる接遇と並んで忘れてはならないのは、適正表示の徹底であろう。ときあたかも食品表示法が制定され、表示の統一が図られたところでもある。国内においても表示は消費者の重要な商品選択の判断材料であり、製造販売業者と消費者の信頼をつなぐ大事な約束事である。ましてや海外からのお客様は、わが国のお菓子に関する基本的な知識を持っておられないであろう。店頭での販売員の説明と表示から得られる情報がすべてと考えるべきであろう。とくに、アレルギー物質、賞味期限、保管方法等は購入者の健康に関わるものであり、特に丁寧な情報提供が必要となろう。ひとりよがりな解釈ではなく、誠心誠意、正直な対応が必要であろうし、科学的に根拠があるのであれば、最初からそのように措置しておくべきであろう。オリンピックの開催は、わが国の品格が問われる機会でもある。政府は、和食の世界遺産登録を目指していると聞く。わが国の伝統菓子も和食の重要な要素をなすものである。一体となって日本のイメージの向上に貢献したいものである。さらに、表示について海外からのお客様に理解していただけるよう、英語などでの表示を店内に掲示するなり、別途印刷したものをお渡しするなどの対応もより一層必要となるのではないか。

いずれにしても、海外からのお客様の増加は菓子業界にとっても大きなチャンスである。まさに、お客様お一人お一人を一期一会、おもてなしの心でお迎えしたいものである。

 全菓連専務理事・山本領