鳥取県菓子店

2013.08.15

倉吉市新名物「餅しゃぶ」

本業専念が一番の夏枯れ対策

清水庵 鳥取県の中央にある倉吉市の新しい名物は「餅しゃぶ」だ。薄く切った長方形の餅を、まるで牛肉のように、しゃぶしゃぶと熱いだしをくぐらせる。だしと相まって絶妙な味。口の中で溶ける。野菜を巻いて食べるのが通だといわれる。

 明治時代の町屋づくりの清水庵は平成13年のオープン。一枚の餅の重さは十二グラム。厚さは三ミリ。試行錯誤の末に生み出された最適サイズだ。白いしゃぶしゃぶ餅は他の地方にもあるが、開店当時からこのお店は、ヨモギ、トチ、ユズの多彩なバリエーションを誇っていた。いまでは種類はさらに増え、ゴマ、椎茸、アミエビ、唐辛子、トウモロコシ、ブルーベリー、抹茶、人参等々の十二種類ものバリエーションを誇る。

餅しゃぶのメニュー 清水庵は百余年近く続く老舗の餅屋さん。その工場の隣が、空き家になって売りに出た。そこはかつての米屋だった。広い間口、吹き抜けがあり、木材もいいものが使われている。壊すのがおしくなった。夏場に弱い餅屋。夏枯れ対策に定食屋をはじめた。だが、定食類は不発で有名になったのは餅しゃぶだった。「本業専念が一番の夏枯れ対策」となった。

 お店を訪ねたが入るのを躊躇した。真夏のお昼時。この暑さにしゃぶしゃぶはいかがなものかと思っていると、「おいしいですよ」と声をかけてくれたのは、愛知県から来たお客さん。満員だったので、昼食は別の店でとることにした。

 予約の時間に店を訪れると、店の前には食事を済ませた団体客がいた。みんな汗だくになっていた。でもお客さんたちは異口同音にこう言ってた。「おいしかった。きてよかった」。餅には暑さを吹き飛ばすパワーが宿っているようである。

 鳥取県菓子工業組合理事長・小谷寛