愛媛県レポート

2013.07.15

若い後継者は現場を熟知し、店一番の職人であれ

 先日テレビを見ておりますと、横浜市長をされている林文子さんという方を紹介されていました。この林氏の経歴が異色で、高校を卒業したのち企業でお茶くみや事務をされた後自動車メーカーのセールスに応募するのですが、当時は女性のセールス職は無く、結果を出すために一日百軒の飛び込みを行い、セールスだけでなく、奥さんが風邪だと聞くと買い物を代わってしてきたり、歌舞伎のチケットの手配をしたりして、お客様と懇意になり、またたくまにトップセールスレディーになり、十年で支店長になったそうです。

 また、外資系の自動車メーカーに移り、実力主義で男女の差別がないため業績を上げ、たった十年で東京支社の社長にまでなっています。

 その後、経営手腕を買われ、ダイエーの会長兼CEОや東京日産の社長を経て、横浜市長になった方です。アメリカの雑誌では、「世界で最も影響力のある女性百人」に選ばれています。

 横浜市は、三年前には千五百人以上のいわゆる待機児童がいて、日本でもワースト一位だったのを、保育所に入れなかった児童のアフターフォローをしたり、保育所事業に一般の株式会社の参入を認めるなどして、今年ついに待機児童ゼロになったそうです。

 この話を聞いて、福島の第一原発を思い出しました。福島の第一原発も、以前テレビで事故が起こる前から、百年周期で大津波のやってくるところに原発を作り、地震や津波で全交流電源が喪失すれば大変なことになることを現場の人間が指摘していたにもかかわらず、上層部まで伝わらなかったと言っていました。

 東京電力の役員の中に、この林氏のような現場からのたたき上げの人がいて、この大問題に目を向ける人がいたら、あの悲惨な事故は起きなかったと思います。

 林市長の強みは現場を知っていて、どうすればお客さん(市民)に喜んでもらえるかを常に考えていることです。

 我々菓子屋の商売も、少し商売が大きくなると、父親は菓子の命であるはずの製造は従業員やパートさんにまかせ、息子には経営の勉強の方に力を入れている方が少なからずいますが、わたしは、二代目、三代目の息子さんには、一から菓子作りを覚えて、そのお店で一番腕のいい職人さんであってほしいと思っています。

 また、そうでなければ、腕のいい職人さんがやめたりして、お客さんから「あの店は最近味が落ちたなあ」などと言われだしても、経営者は一向に気が付いていないということも起こりうると思います。

 この林市長のように現場からたたき上げ、誰よりも現場を知っていることが菓子屋にとって最大の強みです。

 青年会の若い方々には、たとえどんな時代になってもやっていける菓子職人としての腕を磨いてほしいと思っています。

 テレビを見ていて、現場をそして菓子を知っている強みと大切さを思いました。

 愛媛県菓子工業組合副理事長・白石恵一