視点

米トレーサ法にどう対応していくのか(平成21年8月)

―基本は納品伝票の確認と保管―

米トレーサビリティ法の具体的な中身が大分明らかになってきた。農水省によれば、まず、対象品目は、(1)米、(2)米飯類、(3)米を主たる原料とする加工食品、(4)米を特色ある原材料として容器包装に表示のある食品の4つの区分に分けられる。このうち、お菓子の分野では、「赤飯」、「おこわ」、「もち」、「だんご」、「米菓」(あられ、せんべいなど)が義務化の対象になりそうだ。業界として新制度の導入に反対してきた経緯があるが、まずまずの線に落ち着きそうだ。JAS法のように米の重量割合が基準ということになれば、品目の範囲がさらに広がる恐れがあるし何よりも現場での判断、線引きが難しく、何よりも中小菓子業者への負担が限定的な範囲にとどまったからである。
そもそもトレーサビリティなる言葉が初めて登場したのは7年前の牛肉のBSE問題から。危害要因が牛の固体にあるということで「牛肉トレーサビリティ法」が制定される。合わせて「食品衛生法」が改正され、食品事業者すべてに取引記録の作成・保存(トレーサビリティ)への努力義務が課されることになったという経緯がある。

トレーサビリティとはトレース(なぞる、 追跡すること)ができるとの意。農畜水産物の生産(農場から)加工・流通過程(を経て)消費者に至るまでの食品の流通履歴を、消費者側(最終製品)から川上(農場)に向って訴求、追跡できるようにしようというもの。目的は『危害要因のより迅速な除去(製品回収、原因究明と情報開示)』という点にある。
今日では農場段階での栽培記録への取組も重要になってきている。川下に近いところに位置している菓子業者からすれば、使用する原材料の素性が確かなものになるという点では有り難い。問題は取引記録の作成と受け渡しにどれだけの手間ひま、負担が生じるかである。

この点について今回は、事業者側の実行可能性という点にはかなりの配慮がなされているとみてよい。菓子の製造小売の場合、原材料の納品伝票(品名、仕入れ相手、日付、数量)が保管され、商品の製造記録(日付、数量)があれば、トレーサビリティへの備えはできているということになるからである。もっとも、仕入れた原材料(米、米粉など)と上記の「だんご」などの対象商品との間の対応関係(ひも付け)には一定の目安がつくようにしておくことが 努力義務として)求められている。製造卸ということであれば、販売先に対して納品伝票の発行が必要になる。

トレーサビリティ自体は以上のごとくであるが、今回の法律にはもう一つ、いささかやっかいな課題がある。消費者への米の原産地情報の伝達が義務付けられているからである。産地名の伝達はJAS法の一括表示とは関係なく、容器包装に産地名を記載する方法のほか、店頭でのポスター掲示や、店員による説明、ウェブ、電話などによる伝達でも可とされる。また、情報内容は「国産」又は外国産であれば「○○国産」(上位2ヵ国名とその他と表記)でよいという。そうはいっても、例えば、複数産地の米がブレンドされた米粉を使用する場合にあっては原材料の納品伝票もしくは製品規格書などにその旨の記載があるかどうかの確認が要る。また、複数の米粉を使って商品を製造する場合には使用する米粉のブレンド割合の情報が必要となり、製造卸の場合には産地情報を付した納品伝票の作成が求められる。

新制度は、トレーサビリティ部分は平成22年10月から、また、原産地情報の伝達については平成23年7月からスタートするという。準備期間がそれほどあるとはいえない。全菓連としては、全日本菓子協会、全国和菓子協会等と連携し引き続き国との調整を行うとともに、組合員の新制度への取組のためのガイドラインの作成などの作業を進めていくことにしている。なお、国に対しては別途、加工原料米の安定供給に万全を期すとともに、米粉製造業者など川上の関係者に対して正しい情報伝達が確保されるよう指導を徹底すること、さらには川上の不適正な取組によって問題が生じた場合においては罰則の適用や経営に及ぼす影響に対して十分な配慮を講ずるべしとの三点を強く要請している。降ってわいた事故米事件によって風評被害を蒙ったうえ、今回の法律制定によって業界負担が増すということについては釈然としないが、食の安心の向上という要請にも応えていかなければならない。

全菓連専務・矢部正行