各地の菓子店探訪
山口県菓子店の投稿

創作洋菓子のロイヤル

伝統の洋菓子を親子で守り続ける店

宇部市渡辺翁記念会館をモチーフにしたお菓子 昭和48年、大分出身の薬師寺文夫氏が洋菓子店「ロイヤル」を開業するに際して選んだ地は、山口県宇部市でした。炭鉱があり、町が栄え、一旗あげるに志を持って臨むに最適の場所でした。市内に洋菓子店は3店のみ。ケーキに生クリームの製法が取り入れられた頃、都会で学んだ斬新な技術と新しい甘さを求めてお客様が途絶えることはなかったと言います。

 二代目の隆さんは常に忙しく働く両親と過ごせない分、野球に打ち込みました。幼少時代の経験から、子供は多い方がよいと現在4人。月に一度は子供に合わせて休日を取り、今しかできないことを家族で楽しむイクメンぶりは有名です。

 大学では洋画を学び、デザイン会社勤務の経験から玄人はだしのデザインは、さすがの一言です。自分でやれば経費も少ない、と笑います。初めての企画により餅屋さんに餅を作ってもらい、パイ生地で包んだ「おもちのきもち」が誕生しました。既製品でなく、季節ごとの餅を包む焼立てパイは、味はもとより掛け紙も顧客に合わせてオリジナル感を出しています。大手との違いを出せる術を考える上で、今では店の代名詞となった商品にウエディングケーキとギフトがあります。前者は徹底的な打合せで希望を聞き出し、結婚する2人の背景に合わせたケーキ。後者はギフトの包装紙やカードに大切な写真や言葉をオリジナル制作。店内に飾られた写真からお客様の喜びが感じられます。また宇部興産とのコラボ商品も話題の一つです。このように新しい取り組みをしながら、一方で色褪せた写真に誕生秘話を紹介して商品の歴史を誇示する手法は地域の顧客の心をつかんでいます。

 現在、当時の3店は廃業し、洋菓子店としては市内で最も歴史の長いロイヤル。商品のひとつひとつに手を掛け、思いを託す。町に企業城下町としての面影は消えつつあるけれど、初めて食べた苺のケーキがロイヤルだったという市民の声に支えられ、現役の父と二人で腕を振るっています。

 山口県菓子工業組合専務理事・恒松恵子

店舗データ

創作洋菓子のロイヤル創作洋菓子のロイヤル
宇部市南小串2―4―2
http://www.so-royal.com/

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