各地の菓子店探訪
新潟県菓子店の投稿

御菓子処すだ

地元への感謝の気持ちを大切にする

五代目社長須田浩一さん 今回は新潟県柏崎市四谷にある「御菓子処 すだ」の須田浩一さんを訪ねました。

 江戸時代北陸街道の宿場町だけでなく北前船の寄港地や小千谷や十日町といった中小都市との間に高田街道が延びる交通の要衝として発展しました。特に地域間の街道からは越後縮(麻で織った織物で江戸時代身分の高い武士や公家、僧侶などが暑い夏に着る着物)が運び込まれ柏崎宿はその集積場として大いに繁栄し、江戸や大坂、京都、九州、北海道まで販路があったとされ、町を豊にしてききました。この越後縮の職人が多く住んでいた町、柏崎市四谷で明治15年に須田仲蔵さんが創業したお菓子屋です。

 現社長須田さんは、地元の高校を卒業後、名古屋の大学に進学しコンピュター技師に成るべく勉強に励んでいたところ、父親の病を知り一念発起し家業を継ぐこと決意しました。大学を中退、そのまま東京の製菓学校で2年学び、同じ東京の洋菓子店で修行、その2年目に父親が急逝したため、急遽「御菓子処 すだ」の5代目として柏崎に帰ってきた方で、現在では、新潟県菓子工業組合柏崎支部理事として活躍されています。

 戻ったその日から、お菓子の製造を一手に行っていた先代の代わりを務めなくてはならず、毎朝5時には工場に入りお菓子作りを続ける傍ら開発した「エンガトルテ」が新潟県の菓子博覧会で全国菓子連合会理事長賞受賞、昨年は婦人画報の「うまいものおとりよせ」で2011年度スイーツ部門の年間ランキングで1位を獲得しました。今では御中元、御歳暮時期には、東京池袋の東武百貨店、大分のトキワ百貨店で販売され、また全国からわざわざこのお菓子を求めてお客様がお店にお買い物に来るスイーツに成長させました。

 エンガトルテは、スイスの伝統的なお菓子エンガディナーをアレンジした物で、クルミを入れたキャラメルをクッキー生地で包んで焼いた焼き菓子で、食べやすさ・見た目を考えて三角形にカットされたお菓子です。特にクリーミーなキャラメルとクルミの食感・バランスに試行錯誤を続け、またこのキャラメルにあったクッキー生地を作るのに苦労をしたそうです。

 また地産地消にも力を入れており、昨年新潟県菓子工業組合柏崎支部で契約栽培した低アミロースのスイーツ専用米「秋雲」を使ったロールケーキや、パイなども販売しています。

 現在1人で約40種類の菓子を製造している須田さんに将来の夢をお聞きしたところ、自分の目の届く範囲、納得のできるお菓子を作り続けたいので、本店とショッピングセンター内の2店舗以上に増やす事は考えていない。ただインターネットによる販売は今後考えて行きたいとのことでした。

 昨年4月に柏崎菓子組合が東日本大震災復興支援のために行った仙台、気仙沼の避難所での炊き出しとお菓子の配布活動に参加、また今年2月には全菓連青年部が行った、福島、仙台での「愛の菓子」提供と配布贈呈式へ参加など、災害ボランティア活動にも積極的に参加をし、地元では、四谷の商店街振興組合の会計、柏崎青年会議所活動、新潟県食育応援団に参加し地域の子供たちの食育に取り組むなど、お菓子作りだけでなく、自分を生み育ててくれた地域への感謝の気持ちを大切にしている「御菓子処すだ」さんが新潟県期待の菓子屋としてますます発展することを願っております。

 関東・甲信越ブロック長・吉田勝彦