視点

韓国の新幹線に乗って(平成24年8月)

全国中小企業団体中央会のトップセミナーの一端として、韓国中小企業団体のプラスチック成型機製造機械工場の視察見学と、両国の中小企業団体との交流に参加し、併せて韓国・麗水(ヨス)で開催されている国際博覧会に見学旅行をした。

首爾(ソウル)から釜山の西方にある麗水まで、初めて韓国の新幹線に乗車した。宣伝によれば時速三〇〇粁がうたい文句であるが、乗車してみれば時速計はついていなかった。私の感としては日本の特急程度の速さであり、とても三〇〇粁は出ていない。出発してからスピードが出るまで徐々に加速し、又停車する時も徐々にスピードを落し、日本の快速電車のように思えた。直通列車の運転されている龍山から麗水エキスポ駅まで三時間三十分の所要時間。地図で測れば約三三〇粁だから、時速になおせば約一〇〇粁、日本の新幹線二三〇粁と比べれば半分以下のスピード、時速三〇〇粁とは程遠いスピードであった。

韓国の新幹線は日本製ではなく、フランスの様式を採用したもので、これならなぜ日本のものを採用してくれなかったのかと考えられるが、恐らく日本の旧領土であり、日本に対する感情がよくないせいだろう。車内は二席四列であり、真中の通路は車内販売のワゴンを動かせば人が通る余地がなく、一端ワゴンを車外に移動させるという有様だった。途中は人家の密集していない田園地区でも停車し、時間厳守が運転手の命題であるようだ。ところどころ時間厳守の貼紙が目についた。

悪い処ばかりではない。一つ感心したことがあった。それは私がイタリアで体験したことと同じで改札口もなければ出口の集札口もない。日本とは大違いだ。イタリアのローマの終着駅で構内に入って写真を撮ろうと思い、入場券を買おうと切符売場で問答した記憶が甦ってきた。Entrance・Ticketといくら言っても通じなかった。とうとう入場券なしで構内に入ってもかまわないらしいことが判って、やれやれしたことの思い出がある。韓国も同じで、改札口はない。機械もなければ人もいない。無人である。これほどの合理化はないと感服した。出口も同じである。車内でも検札に来ない。車掌は何度も通るが声すらかけてくれない。通訳の人に聞いたら、車内検札はないようで、車掌は発車時点で切符の販売情報を入手しており、切符の未発売の席に座っていれば検札するそうだ。もし切符をもっていない無賃乗車だと、七倍の罰金を支払わなければならないと教えてくれた。これも合理化の一端であろう。

日本との違いを経験した意義ある旅であった。韓国と云えども日本より合理主義に徹しているところもある。民族の違いがそうさせるのかも知れない。日本も韓国のよいところは取り入れるべきであろう。韓国は日本の新幹線を取り入れてくれなかったが、もっと広い気持で隣国と付き合おうではないか。

 全菓連理事長・岡本楢雄