岐阜県菓子店

2012.07.15

金蝶堂総本店

時代を超えて人に愛される

金蝶の簪(飾り部分のみ) お菓子は古来より、人とつながり、文化や風習とつながりをもって、日本人の生活に溶け込んできた。それぞれのお菓子にはその土地が持つ物語や、歴史が深く刻み込まれているが、岐阜県大垣市の老舗、金蝶堂総本店が創る「金蝶饅頭」ほど人や歴史、文化を深く感じるお菓子はなかなか見つからない。

 文久2年(1862年)に創業した金蝶堂総本店の歴史は、創業者である吉田すゑさんという1人の女性の歴史と言っても過言ではない。彦根藩の奥女中として奉公していた「おすゑさん」は、桜田門外の変で彦根城当主である井伊直弼が殺害され城内が混乱する中、実家のある大垣へ戻り、女中奉公で培った菓子作りの腕前を活かし、軒先にお菓子を並べて売り出したところ、瞬く間に評判が広がり、当時の大垣藩家老であった小原鉄心の御用も賜るようになった。

創業者・吉田すゑさん 小原鉄心は、おすゑさんが作るお菓子と男勝りな人柄を気に入り、「汝、女なれども男子をしのぐ気概あり。果たして然らば古今に秀する銘菓を製せよ。」とおすゑさんに命じた所、一念発起したおすゑさんは、修行のために京都へ赴き、無類の酒好きで知られた小原鉄心のために酒本饅頭を学び、鉄心に献上した。

 これに喜んだ鉄心は褒美に金の蝶の飾りの付いた簪(かんざし)を贈り、おすゑさんはこの誉れを記念して酒素饅頭を「金蝶饅頭」と命名した。

6代目・吉田大助専務 おすゑさんの血を引き継ぎ、現在6代目の店主となる吉田大助専務は、金蝶堂総本店を創業し、銘菓「金蝶饅頭」を創作した、おすゑさんに畏敬の念を抱きつつ、おすゑさんをはじめ、先人達が技術の研鑽を重ね生み出してきた、数々のお菓子たちと正面から向き合い、時代に即した形に生まれ変わらせる事こそが、先人達の努力に応える術「菓応道」であると考え、お菓子の研究だけでなく、歴史や文化への探究にも余念がない。旅に出れば、先ずはその土地の銘菓を味わい、お菓子から町の姿を知ろうとする姿は、お菓子を食べるというより、お菓子と語り合っていると言った方が正しいのかもしれない。正に菓応の精神ここにあり。

 今年、創業150年を迎える金蝶堂総本店の次なる目標は、おすゑさんが創った金蝶饅頭のように、時代を超えて人に愛されるお菓子を生み出す事と吉田専務は語る。お菓子と語らい続け、歴史や文化を重んじ菓応道を突き進む吉田専務の姿を、きっとおすゑさんも誇らしげに見守っている事だろう。

 中部ブロック長・槌谷祐哉

 

店舗データ

金蝶堂総本店
本 店:大垣市郭町3-13
電 話:0584-78-3348