視点

開幕まで280日(平成24年7月)

―広島菓子博への期待―

 広島市で開催される第26回全国菓子大博覧会までおよそ280日。地元では広島県菓子工業組合、県、市、商工会議所等経済団体、企業などで組織する実行委員会によってプレイベントの開催など準備作業が着々と進められている。全国の各県菓子工業組合をはじめ菓子関係団体、企業など菓子業界一体となった取組もこれからがいよいよ本番を迎える。

 広島菓子博は1911年(明治44年)の東京での第1回帝国菓子飴大品評会から数えて102年目。過去100年の菓子業界の歩みを振り返りつつ未来の1世紀を展望する、まさに節目の博覧会である。また、広島市での開催は大正10年(1921年)の第4回全国菓子飴大品評会以来2度目、92年ぶりの開催となる。前回の会場は世界平和の象徴で世界文化遺産に登録されている原爆ドーム・旧広島市商品陳列所。今回は奇しくも原爆ドームから道路をはさんだ真向かいに平和、安らぎの象徴でもあるお菓子の祭典が開催される。

 広島は今年のNHK大河ドラマ「平清盛」ゆかりの地。世界文化遺産に登録されている厳島神社がすぐ向うの瀬戸内の海に浮かぶ。中国宋との交易を拓き、貴族社会から武家社会へと日本の歴史を大きく回転させていった清盛のフロンティアが息づいている。広島菓子博が、デフレ不況を乗り越え新たな時代を切り開いていくエネルギーとなり、広島ならではの世界平和への願い、日本の菓子文化の素晴らしさを世界に向って情報発信していくことの意義は大きい。

 博覧会の計画概要をもう一度みておくと、会期は来年の4月19日から5月12日までの24日間。祭典のテーマは世界にとどけ! 笑顔を結ぶお菓子のちから。会場は広島市の市民球場跡地及び県立総合体育館とその周辺で、目標入場者数は80万人を見込んでいる。

 会場には、①シンボルゾーンとして、お菓子の文化、食の歴史などを知ってもらうためのテーマ館が設けられ、その中央には広島の菓子職人の技を結集した世界文化遺産・厳島神社の特大工芸菓子(10×9m)が特別展示される。お菓子の美術館では全国の菓匠が伝統の技を競う工芸菓子が一堂に会し、菓子文化の素晴らしさを伝える。②出会いと交流ゾーンには、全国お菓子めぐり館に地方ブロック毎に銘菓4千点が顔を揃える。そのほか、地方銘菓の即売を行うお菓子バザール館、広島と世界のお菓子バザール館、大手メーカーによる夢のお菓子展示館、お菓子の工場館が設けられる。また、周辺には③お菓子づくりの体験学習が行われる体験ゾーン、④森の茶席、集いのステージのにぎわい・味わいゾーンが、⑤プールサイドには喫茶、キッズパークなどの憩いゾーンが配置される。

 博覧会はもともと、産業、文化などの活動を広く社会の人々に知ってもらうためのもの。実行委員会では、「知る」、「見る」、「食べる」、「買う」をキーワードに来場者の満足を第1に人々が楽しく集う、賑わいの場にしていきたいとしている。毎年2月に開催される国際パリ農業見本市は、歴代の大統領が必ず顔を見せる農業大国フランスの恒例イベント。牛、馬、羊なども楽しいが、何と言っても人気は乳製品やハム、パン、お菓子などの食品がところ狭しと顔を並べる出展ブースの賑わいにある。『見本市には家族で毎年出かける。食と農を大切するお国柄に元気をもらうから』との隣国オランダで聞いたエピソードが思い出される。

 そもそも全国菓子博の歴史は、明治期における菓子税の撤廃運動が契機となって菓子業者の連帯感が第1回の帝国品評会の開催につながっていったという。デフレ不況により中小菓子業者の多くは売上げが伸びず利益が上がらないという苦しい状況にあるが、業界の誇りである伝統イベントを大切にし、製造技術、新商品の開発などに日々研鑽してきた先輩の財産をしっかりと次世代に引き継いでいくためには全員参加の協力が欠かせない。

 第21回松江菓子博(平成元年)から高松宮殿下の後を継いで名誉総裁にご推戴いただいてきた寬仁親王殿下が去る6月6日にご逝去された。「広島菓子博の開催を楽しみにしています」とのお言葉にお応えするためにも広島菓子博を是非とも成功させていかなければならない。先達の気概を引き継ぎ、切磋琢磨し支え合う仲間との連帯と誇りを確認し合う舞台がまた来年巡ってくる。

 全菓連専務・矢部正行