視点

強まる消費の二極化(平成23年10月)

―デフレ不況下の商品戦略―

東日本大震災の衝撃もあるが、 デフレ不況の下で消費者の購買行動はどう変化しているのだろうか。 時代の流れとして次の点を一つ押さえておきたい。 すなわち、 自分の気に入ったもの、 こだわりの分野には多少高くてもお金を使うが、 それ以外のものにはできるだけ出費を抑え安価な商品を選ぶという、 いわゆる 「消費の二極化」 が強まっていることである。 消費の二極化は1980年代以降の欧米や日本など先進国に共通する現象であり、 モノ、 サービスが溢れる成熟社会の特徴ともいわれてきた。 注目したいのは、 日本の場合には長引く不況の下で低価格指向がさらに強まっていること、 一方、 こだわりの分野・商品であっても支出に見合う感動が得られなければ買わない消費者が増えていることである。 家計の可処分所得が低迷する中にあって、 商品に対する消費者の選択基準がよりシビアになり、 かつ、 消費者のニーズ自体が変化し続けているからである。 地域に密着し顧客を大切にして地域文化を担ってきた菓子製造小売業者も決して例外とはならない。

1929年の世界恐慌はデフレと戦うべく人類の知恵が試された。 残念ながら結果として第二次世界大戦の惨禍を招く。 同時に、 さまざまな教訓も得る。 「作ったものを売る」 から 「売れるものを作る」 という売り手側の発想の転換もその一つに数えられる。 販売戦略の古典P・コトラーの4Pをおさらいしておこう。 第1は商品の規格。 お客は誰で、 いつ、 どのように食べてもらうのか、 生活スタイルの提案はあるのか。 包装、 デザインをどう工夫しているか。 第2は販路。 直営店以外の販売ルートの可能性はどうなのか。 第3は価格。 コストをどう抑えられるか。 競争他社との差別化ができるか。 第4には販促活動に工夫を凝らしているか。 DM、 ネットほか、 宣伝媒体の王様 『口コミ』 への切り込みには何が必要なのか、 などを検証し戦略を考える。 4Pは数十年の時を経て少しも色褪せてはいない。

消費者市場の変遷を追ってみると、 1960年代の高度経済成長期を経て70年代には総中流階層化が進み差別化がキーワードとなって多様な商品が登場。 80年代に入ると核家族化、 生活様式の多様化がさらに進展する。 そして、 90年代以降、 デフレ不況の下で消費需要が低迷、 消費の二極化傾向がより鮮明になってきた。 顧客ニーズを的確に捉えた商品づくりとコスト低減に向けた更なる創意・工夫が求められているといえよう。

消費の二極化にどう対応していくか。 製造小売事業者にとって 「割高であっても買いたい商品の追求」 が生命であることはいうまでもない。 コア商品の規格に磨きをかけ顧客支持を保ち続けていかなければならない。 消費者目線に立った商品戦略がより強く求められるようになっている点にも留意したい。 例えば、 喉が渇いたときの飲料はこれと決めている消費者が増えているとの分析がある。 単に安ければよいというのではなく日本的な顧客心理にもっと目を向けるべきとの指摘である (野村證券 「第三の消費スタイル」)。 原材料、 製造工程の安全・安心、 高品質へのこだわりなど作り手 (企業) に対する信頼が消費者選択の大きな部分を占めるようになっていることを忘れてはならない。

情報が氾濫する中で商品のイメージにはシンプルさ、 すっきりさが求められている。 同時に原材料の素性、 味のよさといった訴求だけではなく、 作り手のこだわり・思いなど、 コト・物語の刷り込みによって顧客の共感を得ようとする流れも重要になっている (森行生 「シンプルマーケティング」)。 いわば、 知恵と工夫の詰まったシンプルさの追求と言い換えてもよい。 そうした観点から地域の自然風土、 文化を訴求する製造小売、 中小事業者ならではの商品戦略を生み出すための工夫の余地はまだまだあるのではないか。

お菓子への支出は家計の食料費の中で8%を占める。 不況期にあってもそのシェアはあまり大きくは落ち込まない。 お菓子が私たちの日々の生活の中に組み込まれていることの強みであり、 製造技術を磨き、 売る工夫を日々重ねてきた事業者の努力の結果でもある。 デフレ不況に加え、 国際的な食料・資源価格の高騰、 大震災の影響もある。 時代の変化に対応しつつ業界の知恵と工夫、 切磋琢磨によって厳しい経営環境を乗り切っていきたい。

 全菓連専務・矢部正行