各地の菓子店探訪
長崎県菓子店の投稿

茂木一○香(いちまるこう)本家

子どもたちの夢が詰まったからくりお菓子

写真① 日曜夜のテレビ番組で知り合いを見つけた。K―1グランプリなるものが開催されたその番組中、長崎県の有限会社茂木一○香本家の営業部長梅村玉三氏〔長崎県菓青会県連会長〕が看板商品の「一○香」〔いっこっこう〕とともに出演されていたのだ。長崎のダイナマイトエレファントとなづけられた彼〔見た目は少しこわもてですがとても気さくで優しい方〕の元に、よいお話がうかがえそうであったので取材に訪れた。

 長崎県茂木市は、長崎の中心部から車で二十分の距離にあり、起伏に富んだ美しい海岸線の人口五千人足らずの緑豊かな町である。その茂木町に今から一六七年前、江戸時代天保の改革後、弘化元年の一八四四年初代榎市衛門氏が「えのき屋」として創業、その後一九八八年五月「有限会社茂木一○香本家」として会社設立された。

 「一○香」という屋号にもなった商品は、江戸時代唐人船の保存食とされていたものを初代の榎市衛門氏が日本人向けのお菓子として製造し始めたのがはじまり。原材料は主に、小麦粉、砂糖、黒糖といたってシンプル、形状はお饅頭の膨れた頭を少し押してできた形とでも言うのだろうか?ぷっくり膨らんだ見た目はやわらかそうな形だが、実はやわらかいお菓子ではない。おせんべいのようなかたさだ。からくりお菓子との表記があるように、膨らんだ形の中は空洞。とても不思議な形状だ。一口噛むと、かりっとした食感。そしてすぐに胡麻の香ばしさが口いっぱいに広がり、素朴なやさしい甘さに顔がほころぶ懐かしい味わいの焼き菓子である。「一○香」のような菓子は近県の港町にも存在するというが、よく膨れ、ますます香ばしくぷっくりと丸い形状に改良されたのは、四代目榎伝一郎氏で、ここ「茂木一○香」ならではの形らしい。

 また茂木は、全国でも有名なびわの産地である。そのびわを丸ごと使用し、甘さ控えめのゼリーで包んだ茂木ビワゼリーやびわかすてら、びわもなか、びわようかん、びわまんなども多数店頭に並ぶ。六代目の現社長榎巍氏は、ご先祖様の苦労に報いるよう、今でも更なる研究を重ね、菓子職人として次の世代へ伝える多数の作品を創作し続け全国の百貨店の物産展等でも製品をPRされている。

 テレビ放送後の反響をうかがった。放送直後から、全国から注文が殺到、「一○香」は手作り商品のため、GW期間中は店を臨時休業し生産にあたり、うれしい悲鳴を上げると同時に、地元のお得意様にご迷惑のかかる状態が続き、申し訳なく思っておりますと、梅村氏は言っておられた。

 ここ茂木地区では中学に上がるまでの間、就学前と、小学校四年生時の二回「一○香」のお菓子づくりをする。この体験活動は、約二十年前から行われ、なじみの深い地元のお菓子を実際手作りすることによって、子どもたちに、ものづくりのすばらしさや苦労、喜び等を感じてほしいという願いがこめられている。ふるさとの歴史ある銘菓とともに、茂木の町に生まれ育ったことに誇りを持って生きていってほしいと梅村氏は語る。「一○香」がK―1グランプリにエントリーされた所以はここにあるのだとしみじみ感じた。そして、その子どもたちが大人になり、自分のふるさとには、こんな不思議な美味しいお菓子があるんだと、「おらがまちの宣伝部長!」になってくれたらうれしいですねと顔をほころばせておられた。

 皆様も長崎にお越しの際はぜひ茂木に足をのばされ「一○香」を是非ご賞味されてはいかがでしょうか。

 九州ブロック長・田上啓二

有限会社 茂木一○香(いちまるこう)本家店舗データ

有限会社 茂木一○香(いちまるこう)本家

本店
〒851-0241長崎県長崎市茂木町1805
TEL095-836-1919 FAX095-836-2765
営業時間9時~18時 定休日水曜日
URLhttp://www.mogi105.com/

田上支店
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