岐阜県菓子店

2011.05.15

金蝶園総本家

手作りでしか作れない逸品

 岐阜県の西濃地方に位置する大垣市は、古くは城下町として、また美濃国有数の川港を有す、米の一大集積地として栄えてきた。近代においては、揖斐川水系の伏流水から得られる豊富な地下水を活用した紡績産業を中心とした産業都市として活気に満ち溢れた町だった。

 「水の都 大垣」とも言われるほど豊富な地下水は、産業だけでなく、数々の銘品と呼ばれるお菓子を生み出すために大きな役割を果たしてきた。とりわけ金蝶園総本家の代表銘菓である「金蝶園饅頭」は、大垣の歴史と文化と共に生まれ育ってきたお菓子だといえる。

 金蝶園総本家は寛政十年(1798年)、京都での菓子修行を終えた喜多野弥右衛門により菓子処「舛屋」として創業された。以来210余年にわたり、大垣の地下水を活かしたお菓子作りに研鑽をかさねている。代表銘菓の金蝶園饅頭は、安政二年(1855年)に二代目弥三郎が創作した酒元饅頭で、今も古くから伝わる製法を守り続ける「手作りでしか作れない」逸品である。

 金蝶園饅頭で使用する酒元は全て自家製。前日にもち米で炊いたお粥に岐阜県産の2種類の麹、「饅頭が売り切れても必ず残せ」と言われる毎日注ぎ足されてきた酒元汁を加え、一晩かけて発酵させる。翌朝絞った酒元に小麦粉を加え更に二次発酵をかけてようやく酒元種の生地が完成する。この生地で豊富な地下水を使って良くさらされた、あくのない餡を包んで饅頭の形が出来上がるのだが、ここで更に専用のホイロに入れて三次発酵。実に手間をかけて1つの金蝶園饅頭が生まれる。これには深い訳があり、二次発酵の段階では九割程度の発酵に留め、三次発酵では少し高い温度設定で発酵を進める事で、酒元種の糖化が進み、砂糖を加えない生地の中に優しい甘味が感じられるようになる。多くの職人の技術の研鑽と豊富な地下水が生み出す金蝶園饅頭は、水の都大垣の文化を感じる事のできる銘品である。

 金蝶園総本家の八代目を担う北野英樹氏は、金蝶園饅頭に代表される「手作り」と「手間を惜しまず」を菓子作りの原点と捉え、伝統を守りつつも、洋菓子の技術を積極的に取り入れ、若い年齢層のお客様のニーズにもお応えするお菓子作りを続けている。守り続けるべき物と時代と共に変えてゆく物が織り成すお菓子たちに、金蝶園総本家の菓子文化を感じる。

 中部ブロック長・槌谷裕哉

 

店舗データ

金蝶園総本家本店金蝶園総本家本店
住所:大垣市高屋町1-17
電話:0584-75-3300
フリーダイヤル:0120-058-436
HP:http://www.kinchouen.co.jp