福島県菓子店

2011.05.15

『和菓子は我が師』

叶匠寿庵創業者 芝田清次様の言葉

松屋清風庵 この言葉をご存じの方がたくさんいらっしゃると思います。叶匠寿庵の創業者、芝田清次様の言葉です。子供の頃から旅好きであった私は福島に戻っても年に数度気になる店を訪ねておりました。若さの特権でご主人にアポなしで、面会をお願いすることがあり、そのとき無謀なお願いを聞いて下さった一人が芝田様でありました。以後年に1度位でしたが、訪ねてはお茶を飲みながら話をしてくれたことが懐かしく思い出されます。大津から日帰りで私共の結婚式に出席して下さった事もありました。いろいろな話を聞かせていただきましたが、当時よく理解出来なかったことも最近納得することが多くなりました。和菓子を通して多くのお客様とのご縁。季節の兆しや美しさを感じる感性。得難い師匠、信頼出来る友人、知人とのご縁つなぎ。美しい日本語を探す機会。古典などを学ぶ機会など数え始めればきりがありません。

 和菓子はすべての材料や道具、自然条件などがそれぞれの持ち場で力を発揮してくれて完成していくので、和菓子屋はそれらを一つにまとめ、お客様に提供し買って頂き召し上がっていただく菓子を作る仕事と考えます。材料は正直でムリ言っても聞いてくれず、よく話を聞いて相談しながら作るといい菓子ができます。不都合があれば教えてくれるので、材料を変えたり工程を変えたり工夫できる。またお菓子に思いを込めたふさわしい名前をつけるとお菓子が喜び、お客様にも喜んでいただける事になります。私どもはお菓子を通じて、正当で適正な利益を得る必要があるので、商品設計をする時は、配合や工程を理論的に考え作業性も重視しますが、心に余裕を持ち少々の遊び心、洒落や粋などを加え楽しみながら菓子作りができたら菓子屋冥利につきるというものです。私共の店は和菓子の専門店として、朝生菓子から、お家元もお越しになるお茶会用のお菓子まで、幅広く製品を作っております。私共の四つの柱の一つ、あなた様のお菓子というものがあります。お客様と話をしながら作っていく、オーダーメイドのお菓子です。お客様菅野嘉春さんの希望や想いを出来るだけお伺いしながら召し上がり頂く菓子として仕上げていきます。2週間ほど時間を頂いておりますが、すぐにアイディアが出て仕上がるのもありますが、ぎりぎりまで出来ない事もしばしば。苦労はしますが、私共に新しい手法や考え方が残っていきます。これは大きな宝です。以前はデパートなどへの出店や卸中心の店でしたが、平成4年に今の店舗工場を新築したことをきっかけに方針を大きく変え、徐々にではありましたが店頭小売りだけにしました。比較的時間の余裕ができたので、高校や短大、カルチャースクールでの和菓子担当講師を年に10回程引き受けております。教えるということは大変な事で、作り方だけではなく、材料の話、理論、由来など質問に答えなければなりません。いろいろ調べると昔の菓子屋は中々商売上手で行事菓子として定着させた物がたくさんあります。先輩のお陰で私共は随分助けられています。

 今年3月福島県は大きな災害に見舞われました。福島市は比較的被害は少ない場所でありましたが、1週間程ライフラインが断たれました。そのとき感じた事は、お菓子も人間には大切なライフラインの一つということです。食事だけでは人間は生きていけない事を実感しました。菓子の歴史を紐解くと太古の昔から、甘い物を求めていて甘い菓子が歴史を大きく変えたこともありました。芝田様は菓子が売れるのではなく生き様が売れるのだとよくおっしゃっていました。和菓子店には何百年も続く店がたくさんあります。時代背景などが大きく影響するでしょうが、老舗といわれる店ほど変わらないようで、時代にうまく乗っていく術を持っています。私もうまく次の世代に引き継ぐべく努力を続けようと思います。

 福島県菓子工業組合・菅野嘉春