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青年部の挑戦

伝統技継承「寿賀台」を製作

寿賀台(すがだい) かつてポルトガル人やオランダ人たちは東南アジアや中国でサトウキビから砂糖をつくって日本へ持ち込み、かわりに銀や生糸を持ち帰った。佐賀と長崎にはポルトガルから伝えられた南蛮菓子が古くから伝えられている。カステラやボーロは有名だが、有平糖もその一つであることはあまり知られていない。肥前は日本の中でも砂糖の流通が多かったため、佐賀や長崎で砂糖菓子がさかんにつくられたのである。

 「寿賀台(すがだい)」はさまざまな意匠の有平細工などを組み合わせたもので、かつては結婚式や長寿のお祝いに飾られていた。縁起物である州浜台を有平細工に置き換えたものともいえる。島の形をした脚付きの台に海老や鯛を盛り、箒と熊手を持った高砂の翁と媼や、松竹梅、鶴亀、鳳凰、福寿草などのおめでたい動植物といっしょに岩を配した飾り台である。

 高度な技術を要することと、出来上がりや保存状態が温度湿度に左右されることから、有平細工が敬遠されるようになっていった。次第に木や陶器の型に煮詰めた砂糖水を流し込んで彩色を施す金花糖にとってかわられるが、こうした簡便な技術も継承者がいなくなってしまった。

 当組合青年部では毎年春の佐賀城下ひなまつりにあわせて「寿賀台」の製作に取り組んでいる。細かい手作業を苦にしない若者にとっても有平細工はかなりの修練を必要とする。色ごとにパーツを作り分けて組み上げるという複雑な作業の積み重ねが必要である。それでも雲平や餡平をつかった工芸菓子の製法を学び、年々細かい作り込みができるような手応えを感じている。

 古い「寿賀台」の写真をみると想像を絶する細やかさで全体が仕上げられている。作り手の心が今も伝わってくるような感動を覚える。自分たちがこしらえた「寿賀台」で、お客様に幸福を感じてもらえるよう、年末年始の忙しい仕事の合間を縫って今年も製作に励んでいる。

佐賀県菓子工業組合専務理事・香月道生

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