長崎県菓子店

2022.07.15

御菓子司 岩永梅寿軒

兄弟力合せて伝統の継承

看板商品「寒菊」 今回ご紹介するのは長崎市にある「御菓子司岩永梅寿軒」です。天保元年(1830年)の創業以来、7代に亘り長崎の伝統菓子を受け継いでこられました。現在の店舗には1902年に移ってきたとのことですが、200年近い貫禄がお店からあふれ出しています。

岩永兄弟(右が兄の晃典さん) お店を代表するお菓子「寒菊」は非常に手間のかかるもので、数か月乾燥させたおかきを1年間休ませ、使用する分だけ焼き上げたものに生姜を利かせた砂糖を更に時間をかけて蜜がけして作るもので、年に数回しか作ることができない大変貴重なものです。「寒菊」のように長崎には昔ながらの独特なお菓子が多くあります。共通することは砂糖をふんだんに使用するという点で、シュガーロードの基点であり、日本の砂糖のルーツがある長崎ならではの特徴です。長崎を代表する祭り「長崎くんち」にも砂糖菓子が使われます。「ぬくめ細工」と呼ばれるもので、温めた(方言でぬくめると言います)砂糖に粉を入れ、縁起物の型で型打ちしたものを、祭りの装飾に使ったり参加者に配ったりします。盆菓子も砂糖の細工菓子で花や果物を作ったものが、ド派手な演出で有名な精霊流しの装飾に使用されます。五月の節句に使われる「鯉菓子」も特徴的で、餅や練り切りで作る鯉を初節句の内祝いで送る慣習があり、五月の節句の時期が年間で一番忙しいそうです。また長崎の菓子といえばカステラが有名ですが、「長崎カステラ」は長崎県菓子工業組合が保有する商標で、数年に一度開催される審査会を通過したものしかその名称を使うことは出来ません。梅寿軒でも長崎カステラを販売していますが、福岡のデパートでの催事をきっかけに火が付き、現在では入手困難なプレミアム商品になっています。

貫禄ある佇まいの店舗 7代目を継承予定の岩永晃典さんは長崎菓青会の会長を務められ、弟の康裕さんも一緒にお店と共に菓青会の活動もされています。二人で共通の課題として抱えていることは「後継者の育成」だと語ります。これは菓子業界全体の問題でもありますが、特に伝統を重んじる梅寿軒においては後継者が育たない、若い働き手が続かないことが大きな悩みです。伝統を守るためのお菓子の意義を伝えること、目には見えにくい作り手の喜びをどう感じてもらうか、兄弟で話し合う日々だそうです。そうした中、菓青会の活動でも更に可能性を広げるため「子供たちにお菓子に触れてもらうこと」を意識したイベントを行っています。子供たちにお菓子作りを体験してもらい、「一生忘れられないお菓子の味を覚えてもらうこと」を目指したお菓子教室が会の恒例行事となっています。

 今回の取材は歴史ある長崎の菓子を知る良い機会になりました。伝統を引き継ぐことの重みや、後継者問題という大きな課題はありますが兄弟で力を合わせて立ち向かい、梅寿軒さんが長崎の文化と共に300年・千年と続くことを願って止みません。

 全菓連青年部九州ブロック長・原田茂樹