各地の菓子店探訪
青森県菓子店の投稿

つがる市 當麻菓子舗

しゃこちゃんで地域おこし

しゃこちゃんケーキ 「しゃこちゃん」と聞いて読者の皆様は何を思い浮かべるでしょうか?寿司ネタ?車庫の商品名?

 いえいえ、「しゃこちゃん」とは現代人よりもはるか昔に誕生した縄文文化の置き土産なのです。

しゃこちゃんサブレ 青森県つがる市(旧木造町)沢根地区の亀ヶ岡石器時代遺跡から明治20年に出土した遮光器土偶の愛称が「しゃこちゃん」です。この亀ヶ岡石器時代遺跡を含む縄文遺跡群が2021年7月27日、ユネスコ世界遺産委員会により「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界遺産登録となりました。青森県では長年にわたり世界遺産登録に向けて努力を続けてきました。コロナ禍で沈んだ暗い空気の中にあって、煌めく明るい喜びに満ちた登録決定でした。因みに旧木造町には青森県県立木造高等学校(もくぞうではありません、きづくりです)があります。元力士の舞の海秀平さん、俳優の草野とおるさん、元マラソン選手の小島和恵さん、青森放送パーソナリティーの青山良平さん(元ズームイン朝のレポーター)他、多くの力士や歌手の方が輩出されています。

 2015年、そんな木造高等学校(以後木造高校)の流通ビジネス系列の生徒たちのアイデアと市内の老舗、當麻(たいま)菓子舗さんの技術力で生まれたのが「しゃこちゃんケーキ」です。木造高校生らがこんなお菓子にならないかな?と、デッサンを持ち込み、青森県ではちょくちょく目にする「たぬきケーキ」からヒントを得て當麻菓子舗さんが形にしました。バタークリームで作った頭部にスライスアーモンドを飾り、チョコレートでコーティングし、切れ長の目を描いています。可愛らしいお顔になっています。1個250円で販売中です。県内の新聞・テレビでも取り上げられました。

土偶最中 木造高校生らの勢いは続きます。2018年、またもや當麻菓子舗に「しゃこちゃん」をかたどったクッキーのアイデアが提案、持ち込まれます。ココナツやチョコ風味、くるみ入りなど10数種のレシピで試作を重ね、成形のしやすさ、試食の評価からチョコレートパウダー入りのレシピが採用されました。抜型や包装シールのデザインも生徒たちが意見を出し合い完成にこぎつけました。この商品はつがる市を代表するお土産に成長して欲しいという願いが込められて共同開発され、今では郷土のお土産として好評を得ています。

木造駅 実は當麻菓子舗さん、遮光器土偶の商品をすでに昭和60年代から製造販売していました。「木造銘菓土偶最中」です。小豆つぶ餡とうぐいす豆入り抹茶餡の2種類あります。最中種の片面は遮光器土偶のデザイン、対になる面にはつがる市特産のメロンとスイカになっています。一辺が74ミリの食べ応えのあるサイズですが、餡と最中種の塩梅が実に見事でぺろっと食べてしまえます。こういった実績があるからこそ、高校生らが自分たちのアイデアを形にしようとして、共同開発のパートナーとして目に留まったのも頷けるというものです。

 これで終わりではありません。2020年7月、つがる市の特産品として前述の最中のデザインにもなったメロン「つがるブランドメロン」を丸ごと使ったケーキ「メロンジュエリー」を木造高校流通ビジネス系列の生徒らと共同開発しました。販売初年度は期間限定、数量限定での販売でしたがカラフルでオシャレなスイーツとの高評価でした。

メロンジュエリー 菓子屋として、郷土の文化や特産物を素材に菓子作りをし、地域をPRして情報を発信することで、持ちつ持たれつ地域と共存していければ嬉しい事ではないでしょうか。若い世代のセンスや情熱も加われば、地域の盛り上がりにも繋がるでしょう。つがる市のJR五能線木造駅は遮光器土偶がで~んとお客様をお待ちしています。土偶本体は、目を点滅させて電車の発着をお知らせする事もあり、一見の価値ありです。

 青森県菓子工業組合理事(西支部長)・山崎康裕