栃木県菓子店

2022.05.16

小磯菓子店

水害を乗り越えて新装開店

双体道祖神まんじゅう 近年、未曾有の自然災害により全国各地で多くの人々が被災されています。これまで比較的自然災害の少なかった栃木県ですが2019年10月12日台風19号の豪雨により県内各地で河川が氾濫し浸水や土砂崩れなどの大きな被害が発生しました。この台風により被災された組合員の方も多くいらっしゃいます。今回紹介します「小磯菓子店」もその中の一軒です。

小磯郁夫氏 小磯菓子店は栃木県鹿沼市の中心地から約10㎞ほど西に向かった粟野地区にある和菓子店です。粟野川が流れる川岸に店舗兼工場があり川のせせらぎが風光明媚な景色の中で看板商品である「双体道祖神まんじゅう」を中心に製造販売していました。

 店主の小磯郁夫さんは幼い頃より「お前は大きくなったらお菓子の大学に行くんだよ」とお父様より言い聞かされて育ったため高校卒業後は迷うことなく東京製菓学校へ進学しその後三年間都内の和菓子店で修業した後、実家の和菓子店に戻り、ご両親亡き後は三代目としてお店を引き継ぎ地元の人気店として順調に仕事を続けておられました。

 そんな中、2019年10月12日台風19号は小磯さんの店の脇を流れる粟野川を氾濫させ1・3メートルの高さにもなって小磯さんの店舗兼工場に浸水しこの店舗、この土地で営業を続ける事が出来なくなってしまいました。

 被災後不安な気持ちの中でも小磯さんの三代目として先代から受け継いだ伝統の味を守らなければならないと言う強い気持ちが伝わりクラウドファンディングを紹介されました。

新店舗内観 その結果たくさんの支援が集まり移動販売車を使ったたい焼き販売を始めました。その間一年半、融資も通り被災した店舗から離れた場所のコンビニ跡を改装し裏手には高く盛り土した工場も建て2021年9月に新店舗の新装開店までこぎつけました。
 現在、新店舗では看板商品の双体道祖神まんじゅうを製造販売しており小磯菓子店の復活を楽しみに待っていたお客様で連日、大変賑わっております。

 商人にとって最も大切な店舗と工場、製造の機械、道具など一瞬で失う災害に見舞われても決して諦める事なく先代から引き継いだ味を守るために泥にまみれた旧店舗を片付けながら、たい焼きの移動販売もしながら、その間に新店舗開店の準備も進めて見事に新装開店まで漕ぎつけました。

新店舗外観 辛くても諦めずに前だけを見て受け継いだ味と店を守るために頑張る小磯さんの強さにはコロナ禍で落ち込んでいる場合じゃないと背中を押されているような気がします。

 その店の受け継がれている伝統の味を楽しみに待っていてくださるお客様のためにどんな困難も乗り切れる和菓子職人も悪くない職業だと今回原稿を書くにあたり小磯さんに改めて気付かされました。

 栃木県菓子工業組合鹿沼支部長・谷﨑弘