山形県菓子店

2021.11.17

菓子処 六味庵

「失敗から学ぶ」

六味庵かぼちゃまんじゅう 全国でも話題になったのでご存じの方も多いと思いますが、今年で創業62年を迎える山形県南陽市の菓子処六味庵(むつみあん)さんをご紹介します。

 昨年10月、四代目の菅野幹大さん(34歳)は朝から製造の傍ら接客もこなす忙しさです。職場はガラス越しに売り場が見渡せ、作りながら売ることが出来ます。朝でしたので、一人で製造も店番もこなしていました。

六味庵若夫婦 ちょうどかぼちゃ饅頭を蒸し始めた時、お客様が来店したので作業場を離れました。ところが接客に手間取っているうちに、かぼちゃ饅頭を蒸していることをすっかり忘れてしまったのです。作業場に戻った時にはすっかり蒸し過ぎてしまった腹の割れたかぼちゃ饅頭の出来上がり。その前で愕然としていると、奥様の深里さんが作業場にやってきて「なんだか口の開けたお化けかぼちゃみたい」と、いたずらっぽく胡麻で「目」をつけてみました。

 ひとつひとつの饅頭に何とも言えない可愛いかぼちゃお化けが現れ、幹大さんも即座に「いける!」と判断。試しに店頭に置いたところ、ハローウィンも近かったせいか40個のお饅頭がたちどころに完売してしまいました。

 深里さんは、失敗したお饅頭が飛ぶように売れてしまったことに、半ばあきれ顔でツイッターに投稿したところ、「可愛い!」「発想がユニーク」「食品ロス削減にもいいアイディア!」と多くの称賛と共に4万件近い「いいね」が寄せられました。

 これを見ていた地元の新聞社はじめ、多くのマスコミが放ってはおきません。新聞やテレビ局の取材を受け、連日大忙しです。沢山のお客様が、そのインスタ映えするかぼちゃ饅頭を求めに来ます。初めはわざと蒸し過ぎのまんじゅうを作り続けていましたが、さすがにそれは職人のプライドが許さなかったのでしょう。現在は蒸し過ぎでなく、ちゃんとした饅頭に「目」だけを付けて販売をしていますが、それでも可愛いさが伝わります。きっと六味庵さんの、お客様を喜ばせようとする心遣いがお菓子に現れるのだと思います。

 実は幹大さん、新橋の御菓子司新正堂で修業を積みました。新正堂といえば有名なのが「切腹最中」です。まさか饅頭の切腹で注目を浴びてしまうとは思いもよらなかった事でしょう。

 山形県菓子工業組合専務理事・戸田正宏