大分県菓子店

2021.08.17

稲荷餅屋 荒巻商店

地域に根付いた繁盛店

稲荷餅屋・荒巻商店 別府市南部地区の松原町で和菓子店「稲荷餅屋荒巻商店」を営む荒巻秀幸氏(52才)は、かつて別府市の中でも盛大に賑わっていた松原市場で餅と饅頭をメインに食料品等を製造販売する荒巻商店の長男として生まれ、昭和から平成までの商店街の大きな変化を見て育った。

 そして4代目として家業を継ぐために県内の製菓専門学校に通いながら地元の洋菓子店でアルバイトをしていた時に大きな出来事が起こり、一度は商売継続が危ぶまれたが、ピンチを乗り切り、現在は地域に根付いた繁盛店としてお菓子好きには欠かせない存在となっている。

 大きな出来事と言うのは平成4年2月に別府市松原町で起こった大火(12棟全焼・36世帯90名被災)で、突然店舗を全焼すると言う不測の事態に陥った荒巻商店は、他の商店が廃業したり移転したりする中で一軒だけ松原町の地で商売を続けることを決め家族全員で復旧に努め約一年間かけて完全再開した。

 その間に秀幸氏は大分市内の和菓子店に就職し約3年半の修行の後、25才の時に荒巻商店に入りお客さんの求める商品アイテムを少しずつ増やすことに努めた。

 その後は新商品がケースに並ぶのを楽しみに来店するお客さんも増え商売は順調に回復して行き、28才の時に和子さんと結婚してからは、更に精力的に商品開発を行い、多様する消費者ニーズに応えられるようバリエーションを増やし季節感を絶やさぬよう季節商品の入れ替えもきっちりと行った。

 そのような地道な仕事の積み重ねもあり季節毎や時間帯により決まって来店するお客さんも増えたとのこと。

 家族少人数で一年間通して同じ流れで仕事をするのは大変だが、それを繰り返すよう努めているうちに一日の来客の流れも安定していったとのこと。朝は8時には開いているので、出勤途中に大福や石垣もち等を購入する若い人だったり、お昼前後には赤飯やおはぎ等を購入する主婦やお年寄りだったり、夕方には人気のチョコ生どらを求める子供たちと言うように、購入する菓子は季節により異なるが、訪れる時間帯と客層は大体決まっていると言う。

 荒巻商店の前には自然豊かな大きな松原公園があるが、そこで遊ぶ子供たちやゆっくりくつろぐ親子連れやお年寄りも皆さん自分好みの一品を求めて来店するようだ。

 約30年前に松原町の商店街は失われたが、荒巻商店が存続したことで皆が公園でお菓子を食べるのどかな風景は保たれている。また、お菓子を食べることが生活のルーティンになった人は少なくないだろう。あの時の決断が松原町の人たちにとっても大きな影響を与えたことは時間が経てばよくわかる。今回話を聞いて町のお菓子屋さんの存在意義を改めて痛感した。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄