富山県菓子店

2021.07.16

『伝統と革新を』

御菓子司 こし村百味堂

千代くるみ 私が家族で営む『御菓子司 こし村百味堂』は、私の祖父が越中文化発祥の地、高岡市伏木で創業し、約80年を迎える店です。

 昨年、2代目の父より私へと代替わりをしたことをきっかけに、改めて今後について、一つ一つの菓子から、御客様への提供の仕方等、店作りについて見直しました。その中で、私にとって大きな存在となる菓子がありました。それは、当店の代表銘菓である【千代くるみ】という菓子で、国産の鬼胡桃に砂糖を衣掛けした干菓子です。

 この【千代くるみ】は、創業者である祖父が考案しました。昭和33年の富山国体に昭和天皇・皇后両陛下が来県された折、献上する菓子作りを当店に御声掛けいただいたことがこの【千代くるみ】誕生のきっかけです。当時の祖父のプレッシャーたるや幾ばかりであったか、和菓子の世界に入って年数が増すごとに、感慨深いものがあります。その後【千代くるみ】は、平成の時代にも献上させていただき、2代目の父が販路開拓を進めたこともあり、県内外の御客様に【千代くるみ】を通じて当店を知っていただく機会に恵まれました。

 祖父の苦労、父の想いも受け継いだ【千代くるみ】は、私にとって特別なものであり、この【千代くるみ】が「これからも末永く御客様に愛される菓子であって欲しい、もっと幅広い年代の御客様に知って頂きたい」という思いから、次の世代にへと繋げていくことが自分の使命の一つなのではないかと考えました。

 その為に何ができるかを模索していた中、富山県の推進事業である『とやまの土産ブラッシュアップ「べつばら富山」』応募のタイミングに恵まれました。この事業は「消費のカギを握る女性たちをターゲットに、自慢のスイーツを女性が手に取りたくなる商品としてブラッシュアップしよう」という企画です。【千代くるみ】の商品としての付加価値をより高めていくためには、自社のみの視野で商品を見るのではなく、商品販売やデザイン等の各分野の専門家に今一度客観的に【千代くるみ】を見てもらい、アドバイスを受けることで次に繋がる何かが生まれるかもしれないと思い、とにかく行動に移してみようと応募しました。

 審査会にて選定していただき、各分野の専門家の皆さんから【千代くるみ】についてのさまざまなご意見をいただきました。その中で、祖父の代から無添加、国産にこだわり、素材を生かした上品な味わいの菓子である点を評価いただきました。同時に「今のパッケージだと、中にどのような菓子が入っているのかイメージがもちにくい」「店の雰囲気や【千代くるみ】の伝統といったものが今のパッケージに反映されていないのではないか」「次の集客に向けた工夫を取り入れてはどうか」といったご意見もいただきました。今まで当たり前に見ていた部分を、客観的に見て率直にいただいたご意見というのは自分たちにとっては学びの一つであり、新鮮さもありました。そして、全ての工程が手作業で、量産できない分一つ一つ丁寧に仕上げる伝統の味を守りつつ、「伝統と革新」というテーマのもと【千代くるみ】の中でも「使い勝手が良い」とよく言って頂いている7ヶ入りのパッケージに焦点を当て、ブラッシュアップをスタートさせていくことにしました。地元伏木出身のアートディレクター・グラフィックデザイナーの中山真由美さんをご紹介いただき、私の思いと中山さんの発想とを織り交ぜながら、試作品を作っては幾度も話し合い、検討を重ねました。そして「日本の伝統的な図柄をさりげなく使いつつ、シンプルでモダンなデザイン」にたどりつきました。しおりも見直し、一度の購入で終わらず、より当店を知っていただき、次に繋がるよう願いを込め、当店のQRコードも記載することにしました。

 いよいよ新パッケージが仕上がり、店頭や委託先に出したときには、御客様に受け入れていただけるか緊張しましたが「これ、良いわ!」と、たくさんの御客様に手に取っていただき、また委託先でこの新パッケージを購入し「また欲しくて本店に来ました」と言っていただいたときは、本当に嬉しかったです。

 挑戦したからこそ、得るものそして、さらなる課題点が見えてきて、今回貴重な経験をさせていただきました。私の挑戦は、まだまだこれからです。今後も、一つ一つの経験を大切に「伝統と革新」を胸に、菓子作り・店作りに誠心誠意取り組んで参りたいと思います。

 富山県菓子工業組合高岡地区・御菓子司こし村百味堂・代表・越村淳平