熊本県菓子店

2021.06.17

『阿蘇 天空のしずく』に希望を託す

阿蘇の菓子工房 菓匠 久幸堂

阿蘇天空のしずく 2020年、私たち阿蘇に住む者たちにとって待ちに待った年になる予定だった。

 2016年4月14日に発生した熊本地震。この地震により約4年半もの間、阿蘇への主要道路である国道57号線が寸断され、観光業は甚大な被害をうけていた。

 弊社は1965年に熊本県阿蘇市内牧にせんべい屋として創業。『地元の人に愛されるお菓子屋。阿蘇に来ないと買えないお菓子を作る』という現社長の信念のもと、ゆず萌えという蒸し饅頭を看板商品とし、お土産菓子を中心に製造してきた。販売は店頭・道の駅・ホテルなど、阿蘇の施設を中心としている。

 しかし地震で国道が寸断されたことによって非常に厳しい状況に置かれた。

 実際に熊本市内などに販売に行くと「以前は買いに行っていたけど、今は山を越えないと行けないからねぇ」という声を何度となく聞いた。

 このままではいつか立ち行かなくなると思い、国道開通に合わせ今までなかった物を作ろうと考えた商品が『阿蘇 天空のしずく』だ。

 0から1を作るのは非常に難しい。実際に私も幾度となく失敗している。

 そこで目を付けたのが、1971年に初代社長が考案し、二代目の現社長が改良し広めた『阿蘇の恋唄』である。ミニバームクーヘンにバタークリームを注入したもので、現在も弊社の主力商品である。その阿蘇の恋唄を基に全く別の商品に作り替えることにしたのだ。

 弊社のお菓子はシンプルで手ごろな価格の物が多い。しかし今回は、いわゆる「インスタ映え」する商品。とにかく売り場で目立つ商品をと考え、約50㎝のバームクーヘンにチョコレート・ドライいちごという、手間も値段もかかるものを作った。もちろん味と賞味期限の問題もあるため、原料の産地や配合は0・1%までこだわった。

 こうして作られた天空のしずくは2020年10月に本格発売。雑誌に取り上げられたこともあり、全国のスーパーや大型商業施設などから注文が入るようになった。新しい市場の開拓に成功したのである。

 2021年現在。コロナが終息の兆しも見せず、世界的に苦しい状況が続いています。

 非常に厳しい時代の中、こうして自分の好きなお菓子を作れることを幸せと思い、これからも『地元の人に愛されるお菓子屋』を目指し励んでいきたいと思います。

 阿蘇の菓子工房 菓匠 久幸堂・専務取締役・青木幸一朗