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お餅に魅せられて

~粘りと舌ざわり、その滑らかさを生む町福井~

羽二重餅 福井という町は、冬は日本海側特有のどんよりとした雲の下、我慢強い、粘り強い県民性が特徴と言われています。西に行けば京都まで100㎞ほど、東も100㎞で金沢があり、その間のポケットのような街とでもいうべきでしょうか。明治の中頃より繊維産業が活発となり、当時輸出品目としてトップであった、絹織物の日本最大産地でもありました。羽二重と言われる絹織物が、その滑らかな手触りと、コシがあって丈夫なことから世界中に輸出されました。そしてこの地が、現在お餅の消費量が日本でもトップクラスであることは、羽二重餅が生まれる素地であったのだろうと思います。

 我が社は、市内にて戦前よりおまんじゅうの製造を生業としていました。先代が市内の若手菓子職人さん達と新珠製菓として法人化し、すでに半世紀が過ぎました。若い菓子職人さんたちの溢れるような熱意で、スタートした小さな会社は、おいしい羽二重餅を食べて頂く、そしてわが子に食べさせるような気持ちで作り続けることを、いまでも一番の基本にしています。その滑らかで絹織物を彷彿させる羽二重餅の舌触りは、この地域で多くのお店が手掛け、切磋琢磨しながら地域の名産として今日も作り続けられています。

絹小町 お餅をこよなく愛した先代は、地元の生産者の方々と原料の安定供給にも尽力し、県内のもち米を共同購入方式で、安定した高品質なもち米供給を目指して、40年以上前から同業者で組織化し今日にいたっています。お米にこだわり、製粉にもこだわり、じっくり丁寧に練り上げた羽二重餅が、この地を訪れた人々に、改めてこの地に思いをはせてくれる、仕上がりになっているものと思います。

 いまではこのお餅を使い、あんころ餅を包んでみたり、焼き菓子に使ってみたりと、その素材を生かした用途も広がっています。但しお米と砂糖と水飴のみで作られるこのお餅は、そのまま召し上がって頂くのが一番です。お客様からの声で、こんなにもシンプルなお菓子が、何物にも代えて食べたいというお声を頂いたことがあり、こちらもまた皆深い感動を頂いたことがあります。

 コロナで世の中は大きく変わりました。今すぐ行きたい街に、これからも行けないことが起こるかもしれません。3年後には福井県にも北陸新幹線が延伸され、多くの人がこの町を訪れてくれるものと思いますが、粘り強く、丁寧に、また食べたいと言われるようなお菓子を、この町でつくっていきたいと思います。お餅を通じて地域の培われてきた伝統や文化を形にし、多くの皆様に喜んでいただけるよう、併せて地元福井をPRできるように、誰にも負けないような努力をこれからも重ねていきたいと思います。

 福井県菓子工業組合・新珠製菓株式会社代表取締役・杉本正一

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