各地の菓子店探訪
鳥取県菓子店の投稿

鳥取県 米子市のお菓子屋さん

大山と米子市街地 古くからの城下町で、明治以降は「山陰の商都」として栄えた米子市。ブナの森が豊富なおいしい水を育む名峰・大山のふもとのまちとしても知られる同市内のお菓子屋さんを紹介する。

いけがみ(米子市錦町2丁目)
 小森啓子社長(64)の母親の実家が岡山県津山市で菓子屋を営んでいた縁で、1963年に父親が米子市内で創業。「素材にこだわり、味にこだわり、体に優しいお菓子作り」を経営理念とする。餅や大福餅の原料のもち米は、寒暖差のある中山間地・鳥取県日南町笠木の契約農家が低農薬栽培で育てた1等水稲米を100%使用。名水・米子の水をさらに還元したもので蒸し上げ、杵でつきあげる。あんは北海道産の小豆を銅釜で直火炊きして手作り。大福餅はよもぎ大福、塩豆大福、各種生クリーム大福と多彩。和菓子では2019年、県が掲げる「星取県」にちなんだ最中「星取物語」を販売開始。1箱にかわいい星形の最中種4個分とあんこ瓶が入っており、粒あんと抹茶あんのどちらかを選べる。

いしくら餅店(米子市塩町)
 1960年に創業し、せんべいを作っていたが、数年後、餅づくりに転換した。白餅やかき餅、ひなまつりの頃に菱餅、端午の節句シーズンに笹巻、彼岸とお盆におはぎなどを製造販売。中山間地の鳥取県日野町産のもち米を使って杵つきし、ツヤがあって伸びが良く、米本来の味のする餅を作り上げている。餅作りの合間に先代が始めた「パンダ焼」が人気商品。卵と蜂蜜入りのふんわりしたカステラ生地に粒あん、カスタードクリームを挟んだ2種類があり、平日の午後に店頭販売。パンダの愛らしい顔と体のデザインと素朴な味が多世代に親しまれている。約25年間中断していたが、近隣の祭りイベントで出店販売して好評だったため、5年前に復活させたという。

寿製菓(米子市旗ケ崎)
 1952年の創業で59年に観光土産菓子市場に進出。全国各地の製造・販売子会社を束ねる寿スピリッツを設立するまでに成長した。日本神話にちなむ「因幡の白うさぎ」は、発売から50年余り山陰の代表銘菓として人気を誇る。コクと風味を際立たせるため地元の大山バターを使って生地をしっとりさせ、上品な黄味あんをやさしく包み込む。93年には米子インターチェンジ近くに米子城をイメージしたお菓子のテーマパーク「お菓子の壽城」を開設。栃の実を契約栽培のもち米とともに蒸して杵でつき、厳選された小豆で作ったあんで包み込んだ「白とち餅」などがよく売れている。山陰地方初の洋菓子専門店「KAnoZA(菓の座)」も松江、米子など4市で展開し「抹茶フォンデュ」などが好評。

清月(米子市尾高町)
 1932年の創業。2代目の田部浩之さん(85)は60年以上にわたって和菓子製造の腕を磨いてきた。特に四季折々の花鳥風月を表現する茶席用の上生菓子づくりでは鳥取県内屈指の技能を有しているとして、2015年度に県の優れた技能者に選ばれた。人気商品は、皮に大山沖でとれる藻塩を使った「藻塩きんつば」や、もちもちの食感が口の中に広がる「麩まんじゅう」など。香りのいい小豆や手亡豆にオリゴ糖入りのビートグラニュー糖を合わせた手作りあんのおいしさに定評がある。和菓子作り体験教室も国内外客から人気。「目で見て楽しみ、食べて楽しんでもらえるお菓子作りを心掛けている」と田部さん。3代目の長男・秀哉さん(58)はブランデーケーキや焼酎カステラなど洋菓子を手掛ける。

つるだや(米子市角盤町3丁目)
 大正時代の1925年創業の老舗菓子店。蒸しまんじゅうの「甘爐(かんろ)」は、北海道十勝産の小豆の皮をはいでから練り上げたほんのり甘い上品な風味のあんを上用粉と山芋の生地でくるんでおり、米子を代表する山陰の銘菓として人気がある。手亡豆のまろやかな風味を生かした米子名物の「白羊羹」や、求肥を混ぜたあんをもち米を使った薄く柔らかい種にはさんだ半生菓子の「ささ鳴き」、大山連山にそびえる三鈷峰をイメージして地元産の天然の山うどを甘めに炊いて打ち込んだ落雁の「三鈷峰」をはじめ最中や焼き菓子、カステラ、和洋菓子と幅広いジャンルの菓子を製造販売。4代目の鶴田陽介社長(54)は「地域のお客さまに愛していただいたお菓子を変わらず作り続けたい」と話している。

 鳥取県菓子工業組合