千葉県菓子店

2019.09.18

南房総いとを菓子 盛栄堂

『さざえ最中』オブジェが目印

盛栄堂 国道128号線。

 千葉県茂原市から館山市まで続く外房の大動脈ともいえるこの道路をひたすら進んで行くと、やがて右手に大きなさざえの形をした最中のオブジェが見えてくる。

 『南房総いとを菓子 盛栄堂』

 昨年11月に移転リニューアルオープンをした大正3年から続く老舗和菓子店だ。

 現四代目店主の長谷川浩司氏は埼玉県の『磯崎屋宗庵』橋本正好氏の下で修業。千葉に帰ってからは1級和菓子技能士を取得、和菓子技能士会に所属し、TVチャンピオンにも出場。この度、千葉県菓子工業組合青年部にも入会した千葉県きっての若手のホープである。

 長谷川氏は移転について「はっきり言ってギャンブルでした」と言っていた。先代の時代にも移転の話があったそうなのだが、諸事情により断念せざるを得なかったとの事。長谷川氏自身も移転を考えてはいたが、地方の少子化や過疎化が進み、そのきっかけを失っていたそうだ。そんな中、第3子に恵まれ、待望の男子が生れた事で「もしかしたらこの子が五代目になるかもしれない、この子が継ぎたいと思える店を作ろう」と一念発起し移転に踏み切ったそうだ。

 顧問税理士や、設計士と様々相談し、兄弟子からの助言を踏まえ、昨年11月、移転リニューアルオープン。修業時代、師からの命で様々な店舗のオープンに立ち会った経験のおかげで、自店のオープン時は極力混乱を避けられ、大盛況だったそうだ。

 そして、先述した『さざえ最中のオブジェ』は予算オーバーでも作りたいという、長谷川氏の思いもあって、元々看板商品だった『さざえ最中』は、今では来店されるお客様の90%が購入されていく大ヒット商品になったそうだ。

さざえ最中 店舗は明るく広く、和菓子屋ならでは趣のある作りになっており、店員の方々も働きやすい環境に思えた。何より、長谷川氏のお母様や奥様、店員の方の人柄も含め「また来たい」と思わせてくれる雰囲気がそこにはあった。

 工場は、動線がしっかり考えられており、職人1人、弟子1人、パートの方数名、時には弟子がもう一人増えても問題なく働ける十分な広さがあり、壁に備え付けられたタブレット端末で管理も容易という一職人としては羨ましくなる環境が備わっていた。

 盛栄堂では美味しい菓子作りだけでなく、包材にも力を入れており、見た目、持ちやすさ、開けやすさ、食べやすさを考慮し、自分用含め、御使い物には最適である。

 先述した通り、長谷川氏は「移転はギャンブルでした」と言っていたが、移転して、1年近くたった今でも、移転前の予想を上回るかなり高い水準で、売り上げをキープ出来ているとの事なので、ギャンブルというのなら、勝ちだろう。

 長谷川氏は「業界の衰退が叫ばれている昨今、まだまだ和菓子店は地域住民、観光客などに求められているじゃないかと感じております。東京や都市部で商売を営んでいる先輩方に話を伺うと『田舎の方が菓子店は元気がある!』と、言われることが多々あります。和菓子店という業種はもしかしたら地方活性の起爆剤になることができるのではないか?伝統と革新という相反する側面を兼ね備えた和菓子店こそがこれからの地方の未来を支えていく業種になっていくのではないかと願っております」と、こう言っていた。

 同じ和菓子屋として、同じ千葉で働く者として頼もしい限りであり、誇りに思う。

 今、房総の和菓子屋が熱い。

 全菓連青年部関東甲信越ブロック長・鈴木豊