鹿児島県菓子店

2019.09.18

霧や櫻や(薩摩菓子処とらや)

地域への恩返し

徳重克彦氏と創作生かるかん 北には霧島連山、南には雄大な桜島を臨み、更には、眼前に緑豊かな天降川が流れる、まさにその風光明媚を名に冠した「霧や櫻や」を訪れました。

 その広大な敷地には、高い天井と木の温もりを感じるゆったりとした広いフロアの建物、そして40台もの車が停められる駐車場があり、庭木にも徹底的にこだわり「霧島つつじ」や霧島山にのみ自生する「ノカイドウ」「桜島小みかん」などが、随所に植えられており、店内には霧島市の作家による錫器や薩摩切子も展示販売されています。

 この徹底した霧島にこだわった店づくりには理由があるのです。

ミニコンサートと「バリハピ」 平成25年のこと、霧島市国分の旗艦店が、隣接する施設の火災による類焼で全焼し、製造の機械もすべて駄目になってしまいました。それは私ども菓子業界にとっても衝撃的なニュースでした。

 その再出発の原動力となったのが、地元の方々の熱い応援だったのです。それは、明治から続く老舗「薩摩菓子処とらや」が地元の人々に愛され、地域になくてはならない菓子店として存在していたという証でもあるのでしょう。

 五代目社長の徳重克彦氏は、応援してくださった地域への恩返しとして、この霧島愛の詰まった「霧や櫻や」をオープンし、地元の特産品を使った菓子作りを進めていくだけでなく、当初イートインスペースだった2階のフロアを、ミニコンサートや菓子づくり教室ができる憩いの場としました。

 そこには、障害者の方々が接客、運営する「バリハピ」(バリアフリー・ハッピーの略)というカフェもあり、福祉とのコラボともなっています。

 ミニコンサートは毎週土日に開催されており、今回私は、サックスデュオのミニコンサートに行きましたが、40席ある座席はあっと言う間に満席になりました。演奏家とお客さんの距離が近いので、クラッシックの垣根が低くなり、心から音楽を楽しむ場として、地域の皆様に親しまれているのを実感しました。

 初期の頃からレギュラーで毎週ピアノコンサートを開く女性は、もう148回になるそうです。彼女がプロ・アマを問わず、次々と音楽家を紹介し、輪を広げてくれた効果もあり、今では若手音楽家の育成の場として、また大きなコンサート前の練習の場として定着しており「霧島国際音楽ホールみやまコンセール」を有する音楽の街「霧島」の発展に寄与しています。

 とてもお菓子屋さんとは思えないような活動ですが、今では観光バスのコースにもなったり、他県のお菓子屋さんからの見学依頼もあるとのこと。地域への恩返しが生んだ温かい交流が、これからもずっと続いていくことでしょう。

 鹿児島県菓子工業組合事務局長・惠島理子