広島県菓子店

2019.04.15

創業400年虎屋本舗

子供が笑顔になれるお菓子

虎焼 2020年オリンピックイヤーに創業400年を迎える和菓子屋がある。穏やかな瀬戸内の真ん中に位置し、古くは備後と呼ばれた広島県「虎屋本舗」である。元は廻船問屋を営んでいたが、福山藩初代藩主水野勝成公へ築城の折、饅頭を献上したのが菓子匠創業のはじまりである。以来、福山藩御用菓子司として献上『とんど饅頭』、天皇陛下献上御喜納菓『虎焼』の銘菓を中心に、永く福山の地で商いを続けてきた。時代の変革期であった、明治維新、2度の世界大戦による戦禍をくぐり抜け、広島という平和の発信地で今も当たり前に商いを続ける事ができている意味を考えるという。

たこ焼きにしか見えないシュークリーム 現在は第17代当主である高田信吾の元、全く新しいカタチの菓子づくりに挑戦している。『たこ焼きにしか見えないシュークリーム』、全国お土産グランプリ受賞『てまりすし』などは様々なメディアやアワードに取り上げられている。子供が笑顔になれるお菓子とは「お菓子を通じて社会を豊かにしたい」という経営理念である商人道10訓に通ずるものがある。

 ユニークな商品開発の裏側にもう一つの特徴が見え隠れする。高齢者雇用を軸にしたダイバーシティ経営である。日本中のモノづくり企業が人手不足や職人高齢化という社会課題とも言えるべき経営課題に直面して久しい。そのような中、積極的に60歳以上高齢者の雇用をはじめ、働きやすい環境整備と設備投資、新たな雇用機会の創出を推進した。2014年には経産省ダイバーシティ経営100にも選出された。しかしながら、ダイバーシティとは転じて「いずれかに偏ったもの」になるべきでないと言う。自社が真に目指すべきは、本当の意味での若手とベテランの融合=熟練の知恵と時代のセンスによる商品開発や新たな付加価値の提供である。

虎屋本舗 また虎屋本舗はSDGs活動(国連が推進する17の持続可能な開発目標)という未来に向けた取り組みも評価されている。「和菓子キャラバン」と銘打ち、高齢者と若手の職人が山間部や離島をまわり、子供達に和菓子教室を通じて郷土文化や伝統技能を伝える。6年前から始まり、今や年間2000人を超える実績に加え、新たな付加価値をもった地方創生活動へと発展している。自社にとっては高齢者活用と技能承継が行え、顧客ロイヤリティ向上という経営メリットを達成できる。一方で地域コミュニティ活性化と伝統文化教育に加え、子供を通した新たな瀬戸内創生という未来に向けた内容である。その成果は昨年の首相官邸にてジャパンSDGsアワード受賞という評価を得た。

店内風景 創業400年という節目に承継する次代の高田海道氏は未来の展望をこう語る。「世界からも高い評価を得ている〝瀬戸内〟というブランドを発信していきたい。伝統的な和菓子はアートでもあり、子供達は個性溢れる郷土の色を多彩に組み合わせてくれます。本業を通じて地域社会と発展し、共感を得られるような菓子作りに精進したいと思います」。

 広島県菓子工業組合青年部副会長・澤卓哉