大分県菓子店

2019.04.15

松村万珠堂

先人の想いを後世へ繋ぐ

御手洗和史氏 大分県の「空の玄関口」大分空港がある国東半島の国東市安岐町で三代続く菓子店「松村万珠堂」を受け継ぐため現在修業中の御手洗和史氏に店の歴史や現況などを聞いた。

 はじまりは、東京都で菓子店を営んでいた初代 松村喜六氏が関東大震災で被災し地元に戻り、改めて開業したのが現在の松村万珠堂で、当初は和菓子を中心に地域に密着した商売を行い、しっかりと地盤を築いていった。2代目の潔氏も和菓子中心で卸売を始め、夏場は自転車でアイスキャンディーを販売して回る等、精力的に販路を広げていった。3代目で当代の義信氏は時代の変化に対応すべく洋菓子を学び商品バラエティを豊かにし、アイテム数を増やしていった。

 現在空港等で販売され万珠堂の看板商品となっている「かぼりん」を開発したのも当代とのことで、大分名産のかぼすの中の実を取り除いた丸いままの皮を丁寧に炊き蜜漬けにし、実の代わりに羊羹を流したかぼりんは、そのままカットし皮ごと食べられるのが特徴で、ねっとりとした食感の皮にかぼす特有の香りと羊羹の程よい甘さがマッチしてお茶請けに人気の商品である。

 このように時代と共に成長し代々の店主の創意工夫と努力もあって後世にしっかりと受け継がれている万珠堂も、当代の娘2人が菓子屋を継がないと決断したことで歴史が途絶える危機が訪れたこともあったが、冒頭で紹介した御手洗氏が長女の悠美さんと結婚をするにあたり、自分に出来ることならと一念発起し故郷の宮崎県から菓子を学ぶために大分に来たのが約8年前のこと。現在では定番の商品を全て完璧に作れるようになるため義信氏の下で修業をしながら、消費者ニーズの変化に対応できるオリジナルの新商品を開発したいと意欲を燃やしている。

 万珠堂のある国東半島には宇佐八幡神の化身(生まれ変わり)と伝えられる仁聞菩薩が神仏習合の原点として開いた山岳宗教「六郷満山」の寺院や神社がたくさんあり史跡めぐりの名所としても有名だが、昨年、開山1300年という大きな節目を迎え地元を中心に盛大な記念祭を行っていたのは記憶に新しいが、御手洗氏も昨年男40歳という大きな節目を迎え、今年の3月には次女が誕生するなど家長としての重責を担うべく益々奮闘中だが、松村万珠堂の創業100周年を目前に控え、先人たちが安岐町で守ってきた菓子店の後継者として更なる飛躍に期待したい。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄