大阪府レポート

2018.11.16

専門店から見た、和菓子の現状と対策、これから

大阪府菓子工業組合研究会にて

上野晃富史氏 インバウンド等により日本文化への関心が高まり、「和」が注目を集めている一方、季節感が希薄になり、祭事が衰退しているなど、変化を見せる「和菓子」をテーマにした講習会が10月12日に開かれました。

 講師としてお招きしたのは、株式会社上野忠 代表取締役の上野晃富史氏です。株式会社上野忠は和菓子を中心とした製菓原材料の製造卸、商品開発、製菓・製パンメーカーへの商品提案など、様々な事業を展開しています。

 講演会に先立ち、野村理事長が挨拶に立たれ、まず本年の地震、台風で被害にあわれた方々へのお見舞いを述べられました。あわせて、大阪府中小企業団体中央会が設置している相談窓口の利用を呼びかけられました。

 また、大阪府の最低賃金の値上げや、栄養成分表示の義務化、HACCPなど、対応を求められる事柄が多くある中、「活路を見いだすために、組合として分かりやすく説明する機会を設けています。変化はチャンスです」と述べ、大阪府菓子工業組合で予定している講習会や説明会の積極的な利用を呼びかけられました。

 上野社長の講演では、和菓子を取り巻く現状と、その対策という観点から、次のようなテーマが語られました。
 上野社長はまず「祭事の衰退」についてふれ、過去、年間売上の多くを占めた正月、雛祭りなどの節句、彼岸、お盆、月見等に用いる菓子材料の販売数量の減少を例に挙げ、対策として主に以下のような取り組みを紹介されました。

⃝バレンタイン、ハロウィンなど新たなイベントの取り込み
⃝日常の売上向上
⃝11月22日を「いい夫婦の日」として提唱し、イベントを開催。よもぎの花言葉「決して離れない」をキャッチコピーに菓子を展開。
⃝朝ごはんに和菓子を食べてもらえるよう、惣菜が入った大福の考案など、自己消費のシーンを増やす取り組みの実施

講習会風景 2つ目のテーマとして、洋菓子のパティシエと和菓子職人の特徴を比較し「新たなモノを求める消費者に向けた、不易流行の考えが重要である」として、第二、第三の「いちご大福」を生み出すことの必要性を話されました。

 続いて、コンビニ商材の進化が著しい現在、和・洋菓子に比べ、大きな影響を受けていないリテールのパン屋の特長を取り入れ「焼きたて感、鮮度にこだわったDAY1商材(その日限りの商品)」の開発・販売が求められているとして、コンビニのできないことをやっていく重要性を話されました。また、米からとれる乳酸菌や、もち麦といった植物性の材料を用いた、健康を意識した商品開発についても話されました。

 最後に、世界的な和のブームの中、人気の「和食」にくらべて和菓子がまだまだ注目されていないとして、これからの菓子の商品開発に求められる要素を次のようにまとめられました。

⃝菓子を食べてもらうシーンを、どこに、どう増やすかが大事
⃝インスタ映えする食の延長のような菓子の開発
⃝健康を意識した、あっさり、軽めの商品を開発すること
⃝昨今の気候変動で、暑い時期が長くなっていることに着目し「清涼感のある菓子」「冷やして食べる菓子」の重要性と、そのメリハリとして「濃厚な味の菓子」にも注目を

 そのほかにも、他業種に比べて「食」という分野の強みや「桜の花びら」「きなこ」といった材料の世界的人気ぶりなど、多岐にわたる話題を、ポイントを押さえて分かりやすくお話いただきました。講演の最後には大きな拍手が送られ、感想を口々に語りあう受講者の姿が印象的でした。

 大阪府菓子工業組合副理事長・村上信