株式会社 関製菓本舗
伝統と革新の煎餅
さて今回は京都市北区大将軍にある株式会社関製菓本舗にやってきました。大変お忙しい中、当代(4代目)の代表取締役関常行氏と取締役営業本部長の関雄介氏からお話を伺うことができました。
創業96年目で間もなく100周年を迎える老舗ですが、京都ではまだまだとご謙遜されます。しかしその初代からの会社への功績や業界へのご尽力は相当なものがあり、関製菓本舗のみならず、今日の我々の業界に道筋を多数残していただいていることが歴史そのものであり初代の先見の明に驚かされるところです。
1922年(大正11年)初代関藤一氏は京都千本鞍馬口で創業し、その後国策もあり旧満州国の大連市へ進出。終戦を境に大連市より引き上げ、現在の北区大将軍に本拠地を構えます。1949年から18年間京都煎餅組合理事長を歴任し1954年の京都主催の全国菓子大博覧会では特別出品局長を拝命され高松宮殿下にも御礼状を拝受されています。1959年に法人化、2012年に現代表取締役として関常行氏が就任され、会社と業界の未来を担う立場として取締役営業部長の関雄介氏が日々ご活躍されているという非常に勢いのある老舗です。
経営理念は「お菓子作りを通じて明るく平和な社会に貢献する」で煎餅菓子の卸を主な業務とされています。特筆すべきは卸業界の大量生産の体制にありながら品質には妥協せず、持ち回りの小回りの良さを生かして、品質改良、新製品開発、手作り部分へのこだわり、他店には決してまねのできない卓越した技術を盛り込んでいるところです。
受賞作品は多数に亘りすぎてこの紙面ではご紹介できません(笑)。
ただその中でも関製菓本舗を代表する、それは創始者、そのあとに続く経営者・従業員の皆様の想いが詰まったお菓子を少しご紹介します。
「玉格子」というピーナッツを練りこんだ格子煎餅。格子煎餅自体は昔からあったそうですが、前後の動乱期ただでさえ物資が手に入らない中、その中でも高級素材であった卵を使うことは非常に厳しかった。ライバル店の格子煎餅は卵を使わずに焼き上げたそうです。これは時代を考えると誰も責められません。そんな時代にも関わらず初代関藤一氏は美味しさを追求し卵をふんだんに使い「卵」と「格子煎餅」をかけて「玉格子」というヒット作を生み出したのです。これは現在も主力商品の一つで私(筆者)も工場で出来上がりを頂いたのですが、ピーナッツの香ばしい香りの後になんとも言えない卵の風味が頭に突き抜ける。それでいて懐かしく優しく、ついついもう1枚手に取ってしまいそうになる極上の味でした。
「絹巻」とは文献にも登場する手作りの「巻き煎餅」で、簡単に説明すると有平糖を煎餅で巻いてあるお菓子なのですが、これが正に職人芸と呼ばれる技術を要します。有平糖と煎餅の塩梅の取り方や巻くタイミングなど一朝一夕にはとても出来ません。気候の変化の激しい京都ではさらに難しくなります。さらに「手焼き巻き煎餅」ロールハースはクリームなども詰めた商品で、製造そのものも特許を取っていたという最新技術のお菓子だったそうです。現在誰が聞いても知っている大手菓子メーカーの超有名菓子もこの製法を教わったということで、その技術の高さが想像できます。その本家本元の「手焼き巻き煎餅」現代版として「鞍馬杉」と言う商品名で製造しております。手焼き巻き煎餅をもう一度世に知らしめたいという関雄介氏の熱い言葉です。
さらに3年前に一般顧客向けの店舗「藤兵衛庵」を製造直売店として本社工場に隣接してオープンさせました。関製菓本舗のラインナップはもちろんオリジナル詰め合わせや、煎餅をちりばめたパフェ風ソフトクリームなども楽しめます。この「藤兵衛庵」を新たなブランドとして根付かしていくという目標も掲げています。
又地域活動にも繋がる企画として、山城高校や京都精華大学等の学生にオリジナルパッケージをデザインしてもらったり、女子プロ野球・京都フローラのスポンサーをするなど本業以外の活動もユニークで未来につながる活動を精力的にされています。
老舗の伝統を守りつつ革新的な考えで伸びていく関製菓本舗さん。これからも業界を引っ張っていくこと間違いなしです。
全菓連青年部近畿ブロック長・松田明
店舗データ
株式会社 関製菓本舗
〈代 表 者〉関 常行
〈本 社〉〒603-8333 京都市北区大将軍東鷹司町135
Tel:075-463-7185
Fax:075-463-7187
〈創 業〉1922年
〈設 立〉1959年
〈資 本 金〉4000万円
〈従業員数〉35名
〈問い合わせ〉取締役営業本部長:関 雄介 090-6237-0017