大分県菓子店

2017.08.17

和菓子店「菓匠花より」

和菓子で笑顔に あくなき前進

「菓匠花より」を営む川部雄一郎氏 大分県のほぼ中央に位置する湯布院町は、東の軽井沢、西の湯布院と称され、全国的にも知られるようになった今では年間約400万人の観光客が訪れる大分県を代表する温泉観光地の一つである。そんな湯布院の人気スポット、金鱗湖(きんりんこ)から徒歩一分の場所で和菓子店「菓匠 花より」を営む川部雄一郎氏(43)は、和菓子職人としては少し異色の経歴の持ち主である。元々は生まれ育った大阪で調理師の勉強をした後、自らおでん屋を経営し、開店以降しばらくは順調に商売を続けていたが、時代の変化で商店街から徐々に通行人が減少していき、かつての賑わいが戻る見込みもないことから約5年間守ってきた店を思い切って閉めた。その後、事情により奥様の実家がある大分県に赴くこととなった川部氏が新天地で見つけた仕事は、料理のキャリアを生かせる給食関連の会社だった。業務内容は老人ホーム等への食事の提供だったが、経験者で何でも熱心に取り組む川部氏は社長からの信頼も厚く、すぐに製造から仕入れまでを任されるようになり、自分で献立を考えるようになると安全面やコスト面等の条件内で少しでも美味しいものを提供できるよう研究を重ねた。

 そんな中、ホームのお年寄りが食する「おやつ」がほとんどスーパー等でまとめ買いされる賞味期間の長い個包装の味気ない品だと気付く。川部氏はどうしても手作りの美味しいお菓子をホームの皆さんに食べてもらいたいと考え、専門ではない和菓子作りに没頭した結果、一つの羊羹が出来上がった。

 あまり練り上げずに丁寧に拵えた羊羹をパックに詰め、熱殺菌することで衛生管理の問題を解消し、糖分を抑えられたことで小豆の味わいを活かした瑞々しい羊羹を作り上げた。

 その試行錯誤の末、完成させた手作りおやつの第一号は想像以上の反響で、食した人から感謝の手紙をいただいたこともあり、提供者としての自分の中で何かが変わった瞬間だったと振り返る。

 それから独学で和菓子の研究を続け、納得のいくおやつを作っては提供していると、ホームからの喜ぶ声が社長の耳にも入り、いつしか応援してくれるかのように会社に和菓子の講師を招いては講習会を開催するようになったと言う。

 そんなある日、川部氏の作る和菓子のファンとなった社長から突然「川部君、和菓子屋をやりなさい」と猛プッシュがあり、決断は早い方だと言う川部氏は平成19年9月に「菓匠花より」を開業し、あれよあれよと言う間に和菓子屋になった。経験の浅い分、人より努力し、なんとか順調にここまで頑張れているが、昨年4月に発生した熊本大分地震に店舗兼工場の設備はことごとく壊され観光客の居ない湯布院の現状に一時は愕然としたと言う。しかし全国の同業者の方からの激励等、皆様の気持ちに助けられ、同年10月に開催された復興イベント「元気が出るグルメレシピ王は俺だ」に参加した際は、感謝の気持ちを込めて作った米粉クレープ「思いを米て」で県内から選ばれた企業三社に勝ち残り、芸人が選ぶグルメレシピ王のチャンピオンに輝いた。このことで気持ち的にもしっかりと立ち直り復活した形となった。

 現在は10周年を目前に新しく大分県版クリエイティブ産業と言う事業に取り組んでおり、最先端の技術や、豊かな発想並びに感性を持つクリエイティブ人材とコラボレーションすることで、競争力の高い商品・サービスの創出及び新規マーケットの開拓に繋げていくことを目的としている。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄