鹿児島県レポート

2017.05.22

匠の技 ~時を超えて~

若き和菓子職人の情熱

桜岳の美(昭和48年鹿児島菓子博) 本物と見まごうばかりの迫力、緻密かつ繊細で見る者の心を捉えて離さない魅力。まさに匠の技を余すところなく発揮した工芸菓子。

 昭和48年に鹿児島で第18回全国菓子大博覧会が開催されたおりに、全国からの来場者を、壮大な桜島を表現した「桜岳の美」、そして美しい花々や五重塔などの工芸菓子が出迎えました。その多くの作品を当時の若い和菓子職人たちが、切磋琢磨しながら己の技術をいかんなく発揮しました。

 昔の職人さんたちは、菓子の技術を高めるだけでなく、書や絵画を学び感性を磨いたと聞いています。

 その後、鹿児島から菓子博覧会に工芸菓子を出展することは途絶えていたのですが、前回の広島菓子博覧会の時から、鹿屋市「菓子工房亜ん寿」の大迫孝さんと姶良市「御菓子司あじ福」の岩川中さんという若手の二人が出展しています。

 日頃から、和菓子の良さを広げる活動や勉強会などにも熱心に取り組んでいる二人です。

 大迫さんは、長年独学で、日々の仕事の合間にコツコツと学び続け、同じく菓子職人のお父様への深い尊敬と、一人前に育ててくれた感謝の思いを注ぎ込んで、制作しました。

㊧「薩摩の飛翔」/㊨「耐雪梅花麗」 作品名は「薩摩の飛翔」。翼を大きく広げ、羽の先端まで満身の力を籠め、松の枝から今まさに飛び立とうとする鷹の迫力が力強く表現されています。

 岩川さんは、奇しくもお祖父様が第18回鹿児島菓子博の時に工芸菓子制作で活躍された和菓子職人の一人でした。そのお祖父様に直接指導されたことがなくとも、DNAなのか、原体験が呼び覚まされたものなのか、熱い情熱をもって、制作に取り組みました。

 作品名は「耐雪梅花麗」。西郷隆盛の言葉ですが、雪に耐えて咲いた可憐な梅の花びら一枚一枚が丁寧に作られ、鹿児島を象徴する桜島とともに表現されています。

 まだまだ若い二人で、全国の熟練の方々には及ばないかもしれませんが、今後さらに勉強と経験を重ね、大きく力強く羽ばたいていくことでしょう。

 鹿児島県菓子工業組合事務局長・惠島理子