三重県レポート

2016.12.21

第27回全国菓子大博覧会・三重 お伊勢さん菓子博2017

巨大工芸菓子制作レポート

伊勢参宮 宮川の渡し 三枚続 平成29年4月から開催されるお伊勢さん菓子博2017に於いて、お客様を驚嘆させること必至の巨大工芸菓子プロジェクトが進んでいる。

 三重県菓子工業組合青年部では、2016年2月から企画、準備をスタートさせたが、南北に距離のある三重県に於いて、青年部員が一堂に会して製造を行う事は移動時間等の制約から困難である。そこで、北勢、中勢、南勢地区に区割りを行い、思いを同じくする青年部同志が心を一つにしながらも、其々のパートに分かれて、延べ60人体制で制作に取り組んでいる。

 制作部長を務めるのは、三重県菓子工業組合青年部の早川賢氏(全菓連青年部元中部ブロック長)。歌川広重の浮世絵「宮川の渡」をモチーフに、10m×6mのステージで表現する。餡平、雲平、洋菓子の技法であるパスティヤージュも加え、北勢地区は桜を、中勢地区は松、南勢地区が建造物をとそれぞれ担当。その中から今回はまさにお伊勢さんのおひざ元、南勢地区を取りまとめる野村幸久氏(野むら製菓舗)と北勢地区で桜の製造に取り組む岡本伸治氏(ことよ)にお話を伺った。

巨大工芸菓子制作作業風景① 工芸菓子は花鳥風月を表現する事が多いが、柔らかな素材で直線的で頑強な建築物を表現する為には、技法の工夫も必要であるが、今回の制作にあたっては、浮世絵という平面から立体を表現するため、当初段階の設計に苦労したと話す。モチーフとなる「宮川の渡」には、お伊勢さんの名所でもある、正殿、宇治橋、鳥居の他、旅籠や茶店、遊郭等もある。正殿や宇治橋は現存しているため、それらを実際に見て、確認できる部分もあるが、その他の江戸時代の建造物設計には大変な苦労があった事は想像に難くない。その中でも苦心の大作が「東屋」である。100㎝(縦)×70㎝(横)×70㎝(高)もあるこの大きな作品は浮世絵のとおり、作品の右側に鎮座する予定であるという。

 また、桜に取り組む北勢地区では、16本の桜を製作予定であるというが、5弁一組の桜花をなんと6万4千輪も作るとの事。更に驚嘆するのは、その16本の桜それぞれにモデルとなった木があるのだという。日比野サブリーダーが中心となって、絢爛な枝ぶりの桜の木を16本チョイスし、其々を模したため1本として同じ木がないと話す。より自然の情景を表現したいという情熱と技術には敬服するばかりである。

巨大工芸菓子制作作業風景② しかし実際、広重の浮世絵に桜は描かれていない。実はこの「宮川の渡」の対岸には、お花見時期、伊勢市民にお馴染みの桜の名所「桜の渡」と称される場所があるという。歌川広重の切り取った図案を更に菓子屋の匠たちが想像を膨らませ、豊かな情景をお菓子で表現してくれると思うと、菓子博の展示に一層期待が膨らむ。

 今回、中勢地区の取り組む「松」のお話は伺わなかったが、途方もない膨大な松葉を撚り続けているであろう。そうした苦労も、来場したお客様たちの感嘆の声を聴けば、必ず達成感や充実感へと繋がっていくことだろう。

 今回、青年部が主体となり、メンバーはもとより、その組合員のお店のスタッフや青年部以外の菓子組合員も協力して作成にあたってくれているという。小さなパーツを作っている限り、その全体像は想像するにとどまり、完成まで集中力を持続させることは容易なことではないかもしない。しかし、そういった業界の若手の思いや力の結集こそが、世界に誇る日本食文化の一翼を担う、和菓子を世界に、次の世代に伝えてくれるだろう。

 全菓連青年部中部ブロック長・村中洋祐