大分県菓子店

2016.11.21

甘味処 禅海茶屋

新たな魅力創出へのリスタート

古園智大氏 平成24年7月に九州北部を中心に発生した集中豪雨の被害により店舗兼工場「やすらぎ処 青の洞門」の閉店を余儀なくされた耶馬溪(やばけい)観光開発株式会社(中津市)の古園智大(ふるぞのともひろ)氏は、祖父であり創業者の故古園静馬(しずま)氏がこよなく愛し全国にその素晴らしさを広めたいと願い続けた大分県有数の観光地「耶馬溪」を再び活気ある故郷にしたいと決意し、数々の困難を乗り越え今年の2月14日に「甘味処禅海茶屋」をオープンさせた。

 小さい頃から観光客で賑わう耶馬溪の様子を見て育った智大氏は、季節や天候などに左右される来渓者数、各市町村の地域興しにより起こる集客の分散等が人口の減少と共に大きく影響し始めていた地方の観光業の変化を察知し、もっと広い視野で経営を学ぶため学生時代より故郷を離れ、名古屋・東京にて、ホテル、ブライダル、飲食、メディア等のサービスを自分の目で見て体験した。そして30歳を前に帰郷し、祖母と母が営む飲食店にて仕事を覚える一方で、地域活性化事業としてこれまでに学んできたことを活かし、子供向けイベントであるダンスフェスティバル等を企画・開催し耶馬溪の発展に力を注いでいた。

 店舗としては食事等の提供、お土産品の販売を行いながら、作りたてのそば饅頭、串団子を店頭で販売するなど、利用客からの評判も良く経営は順調であった。そんな中、予てから菓子に関心を持っていた智大氏は、当組合が開催した和菓子講習会に参加し若手菓子職人と接したことで、菓子製造はもちろん組合活動にも興味を持つようになり、丁度その後に発足した大分菓青会にも加入し積極的に情報交換を行うことで組合の事や菓子の知識等を得ていった。

 その矢先に九州北部豪雨災害に遭い、商品から製造関連の機械など、全てを流されてしまうこととなり、2mを超える浸水で土砂が積もった店舗は再開をするには余りにも損傷が激しく、国が行う山国川青地区河川改修工事に合わせ解体し再出発することを決断した。

 この時、智大氏は改めて故郷の大切さ、素晴らしさを痛感し、復興と同時に、より良い耶馬溪の魅力を発信したいという気持ちが強まり、景観を含め来渓者に更に楽しんでもらえるような茶屋を開店させるためコンセプトから練り始め各地を巡り勉強をした。

 そんな努力の甲斐もあり耶馬溪が日本新三景に選定されて丁度100年目の今年、古材をふんだんに使い歴史ある和の文化を感じさせる禅海茶屋を見事に完成させることができた。

 菓子についてはオープンに合わせ、山国川を優雅に泳ぐ鯉をイメージした和菓子「こいこがれて」を発売したほか、併設したカフェでは京都の抹茶を使用した「茶だんご」や「抹茶ソフトクリーム」等を提供し立ち寄る人を和ませている。

 智大氏は最後に「突然の災害で全てを失い一度は愕然としそうにもなったが、たくさんの人からの支援や仲間からの励ましの声が後押しとなり、前に進むことができた」と感謝共々当時を振り返っていた。

 開店してから初めての本格的な紅葉シーズンを間近に控え、ひとかたならぬ地元愛で復興に尽力してきた彼の笑顔からは達成感が伝わってくるのと同時に意欲と期待が満ちているのを感じた。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄