大分県菓子店

2016.08.17

仏の里に導かれて

豊後高田市「菓子禅 髙田屋」

三世代揃った菓子禅  髙田屋のみなさん 県北の国東(くにさき)半島北西部に位置する豊後高田市には、地方都市再生の成功例として注目される昭和の町があり、昭和30年代の街並みを再現したレトロな雰囲気は古き良き時代を知る日本人の心を掴み、全国から老若男女を問わず多くの人たちが訪れる観光地となっている。

 そんな情緒漂う商店街の一角で和菓子店「菓子禅 髙田屋」を営む高梨昭男氏(66歳)は、平成22年12月に大分市内の老舗和菓子店からの独立を決断すると約60㎞離れたその場所を新天地とし、妻の真須美さんと共に移り住んだ。

 しかし、聞けば念入りに市場調査等をした訳でもなく偶然希望する広さの空き店舗が見つかり、言わばタイミングと直感でその地を選んだため、初めのうちは来店者数、客層など環境の違いに戸惑いもあったが、少しずつ豊後高田並びに近隣の市町村を知ることで地域に適応し根付いていった。大きく変わったものの一つとして地域の特色である地元の農産物等を原材料とした商品作りを意識するようになったとのこと。豊後高田市には、落花生や蕎麦などの特産物があるが、それらを使った商品開発はもちろんのこと、昨年9月に八幡総本宮の宇佐神宮で開催した大分県菓子工業組合献菓祭・菓子祭において圧倒的な売上を見せた「みかん大福」は、味の決め手となるみかんにこだわった髙田屋の看板商品で、季節に合わせて品種を変え、その時に旬となる近隣の地域で収穫したみかんを使用することで、常にフレッシュな酸味と白餡の上品な甘さが絶妙なバランスを保っている。晴天に恵まれた二日間の菓子祭において、とても瑞々しい商品ということもあり、長い参道を歩き一休みする参拝客の人気を集めていた。この時は予想以上の売れ行きで何度か品切れになり、販売に来ていた息子の大輔氏(29歳)が髙田屋まで片道15分ほどの道を車で走り、急いで製造し持参する事態となったのだが、この件について昭男氏は「シルバーウィークの忙しい時期ではあったが徹夜してでも商品を作っておくべきだった」と振り返っていた。このように現状で満足しない強い向上心を持つ昭男氏は若い頃、柔道や空手に励んでいたらしく、長年武道で培った精神力と柔軟性が昭和の町での菓子づくりに活かされているのだと感じた。また新たに地元の特産物を使用した商品が完成し、お伊勢さん菓子博2017に出展申込をするなど活気ある髙田屋だが、3月には大輔氏と舞衣さんとの間に桃花ちゃんが誕生し、三世代揃った菓子禅 髙田屋は元気一杯だった。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄