山口県菓子店

2016.06.20

せめんだるの由来

菓子の数だけエピソードがある

せめんだる とある日、セメント工業都市の景観研究をされる関西の大学教授から一通の質問メールが届いた。山陽小野田市に実地調査の際、お買い求めいただいた「せめんだる」という当店の看板商品(最中)に係わること。

 セメント樽でなくせめんだると呼ぶのはなぜか?昭和30年代にたる最中から「せめんだる」と改称し商標登録された。ただの語呂合わせであるが、観光都市でないので同型同名の菓子製造者が現れなかったと思われる。栞に書かれているせめんだる川柳は昔詠まれたものか?毎年新たに募っているのか?5つ川柳が綴ってあるが、これは当時から変えていない。ある意味時代遅れな川柳に関心を持ってくれたことに感謝しつつ、顧客から募集すれば販売促進につながるかもしれない。という内容と「せめんぶくろ」という菓子が北海道にあること。津久見や秩父などセメント会社に関連する地域から稀に注文をいただくことなど返信したら、ご丁寧な返信が届いた。

栞に書かれているせめんだる川柳と由来 産業に因んだ銘菓として横浜市久里浜に「発電もなか」があったこと。当市に火薬工場があることから「ダイナマイト羊羹」があったこと。いずれも現存しない。当市においてセメント町、硫酸町が地名として現存することを引き合いに、砿都の生んだ個性的かつ貴重な菓子であるから、近年、産業観光や工場夜景、テクノスケープ、産業遺産など工業都市特有の文化が再評価される時代であり、追い風が吹いているという温かい内容だった。若い世代に確実に受ける、というのはお世辞であろう。

 研究を生業とするだけに博学な知識であり、菓子や観光への思い入れだけでやりとりを続けたら綻びが出るので、お礼だけにとどめておいたが、大きな励ましをいただいた気がする。

 これを契機に産業に因んだ菓子について調べ考えた。どんな菓子にも由来がある。菓子の数だけエピソードがある。石炭を模した菓子は多々あるし、金箔で砂金を表すものもあった。産業に因まなくとも製造中止となった銘菓の復活を望む声はよく聞く。これは見合った利益があれば廃業しないのにと皮肉ってみたくもなるが。立体的な形状でふるさとを表す最中が全国にあふれている中、手前味噌な話で恐縮であるが全国の菓子屋に届けられるこの新聞で何か情報が得られないかと、また、菓子の持つ可能性はまだ十分にあるとお伝えしたかったのである。

 山口県菓子工業組合・つねまつ菓子舗・恒松恵子