各地の菓子店探訪,岐阜県菓子店

2016.03.18

梅園菓子舗

お客様に喜んで頂ける商品を

加藤義久さん 岐阜県多治見市にひっそりとある梅園菓子舗、私はそこの四代目です。大学を卒業後、岐阜市にあります「御菓司 香梅」様で五年間修業させて頂き、餡づくりを始め沢山の和菓子の基礎を教えていただきました。

 修業を終え実家の菓子屋に戻った際、まずは店の状態を知ろうと観察を始めました。最初に気付いたが、生菓子の変化の少なさ。季節感はあるものの、販売時期が長くお客様も飽きてしまうのでは…と思い、教わってきた生菓子を何種類も投入し、お客様に喜んでもらおうと頑張りました。ところが、喜んではもらえていたのですが、売り上げには影響してきません。何故かなぁと店に出て接客してみると、聞こえてきたのが、「梅園さんは老舗で敷居が高いから、いざって時しか買わない」とか「進物用で価格が高く、家用にはちょっと…」という声でした。確かに当店は、棹物、羊羹、焼き菓子の進物用、上生菓子のラインナップがメインで、気軽に買えるというお店ではなかったかもしれません。私の和菓子作りの理念は「和菓子で心に安らぎを…少しでも多くのお客様に喜んでもらいたい…」であり、このままではどちらも達成されません。そこで思いついたのが、どら焼きの製造です。大衆的で親しみやすく、今までの当店のイメージを変えるにはもってこいであり、修業先の香梅様のどら焼きがとても美味しく、実家に戻ったら是非作ろうと修業中から思っていましたので、今こそその時だと、すぐに試作を始めました。

梅園菓子舗 当店には古い電気式の小さな一文字しかなく、当然手焼きとなります。生地を焼く事に関しては、修行中にみっちり鍛えられていましたので問題ないのですが、温度や焼き時間の調節が難しく、意外とてこずりました。でもそのおかげで、どのように焼くとふわっと焼けるのか、何をするとしっとり焼けるのかがだんだんとわかってきました。そして半年ぐらいかけてやっと、自分の一番良いと思う状態を作り上げ、店に出せる商品に仕上がりました。

 店に並べるようになってお客様の反応を楽しみにしていましたが、お薦めしても「どら焼きなんて…」というお客様がとても多く、今来て下さっているお客様の当店へのイメージはなかなか払拭できないようです。さらに、中高年のお客様が多く若い世代のお客様が非常に少ないことにも気付きました。一日30個作っても売れ残るという日々が続き、何とかしなければと思っていたところに、偶然飛び込んできたのが地元のフリーマガジンを作っている編集者さんでした。まだ立ち上げたばかりで掲載してもらえるお店を探しているとの事で、私も知らない雑誌でしたが、これは若い世代の方に知ってもらえるチャンスだと、初めて広告というものを出してみることに。これが思いの外反響があり、どら焼きを求めて来て下さるお客様が急増しました。

 知り合いの社長様によく言われていました。「いい種を持っていてもまかなきゃ芽は出ない。当然花も咲かない。大事なのは種まきからだよ」と。お客様に喜んでもらうには、まず食べてもらわなくてはいけない。そのためには店に来てもらわなくてはいけない。そのためには店を知ってもらえるよう情報発信をしなくてはいけない。そのことにようやく気付きました。それからは、広告を積極的に出して認知度を上げることに力を入れ、今では一日に800個以上売れる看板商品となりました。

 梅園菓子舗・加藤義久(岐阜県多治見市)