大分県菓子店

2015.11.17

臼杵市 髙進堂

地域に貢献できる喜び

髙進堂2代目・髙橋睦男氏 大分県の東海岸に位置する臼杵市の自然豊かな小さい町で、祖父から受け継いだ和菓子の味を守り続けているのが髙進堂の二代目 髙橋睦男氏(69才)である。

 髙進堂は初代 髙橋治郎氏が15才のころ隣町の和菓子店(朝日堂)に弟子入りし、数年間修業した後に同市新川という地で開業したのが始まりで、5年ほど経った後、もっと立地条件等の良い場所をと市内を探し現在の場所 竹場に移った。近くには後に彫刻として九州で初めて国宝に指定されることになる臼杵石仏があり、当時は胴体から自然に転げ落ちたと言われる大日如来像の大きな仏頭が存在感を放っており、周辺は観光客で賑わい、交通量の多い道路沿いに店を構え直したせいもあって商売は繁盛し順調に運んでいった。

 そんな中、幼い頃から菓子作りに関心のあった睦男氏が高校卒業と同時に祖父のもとで働くこととなり、菓子の製法や原材料へのこだわりを受け継ぎ、現在も昔ながらの添加物を極力使用しない和菓子を毎日丁寧にこしらえ店頭で販売している。

 主力商品は「どら焼」と「石佛饅頭」で、しっとりふわふわの生地に北海道産大納言を使用した粒餡の優しい甘さがマッチした「どら焼」は遠方から求めてくる人も少なくない評判の逸品であり、一方の「石佛饅頭」は元々既に廃業した同市田町の老舗和菓子店(花月堂)が長年製造販売していた銘菓で、廃業により姿を消したところ、方々より惜しむ声が上がり、それほど郷土の人に愛された菓子なら後世に残さねばと睦男氏が全てを譲り受け平成10年ごろ見事に甦らせたのである。

 このように日頃から地元の人への感謝を忘れず、常に期待には応えたいと考える睦男氏は、声がかかれば断れない性分で、過去には民生委員や交通指導員などの大変な仕事を引き受けてしまった時期もあり、どんなに本業が忙しくとも献身的で協力を惜しまない姿勢を貫いている。店舗内に飾られた数ある賞状等の中でも、昨年、高校統合により閉校となった臼杵商業高校から贈呈された感謝状には特別な思いがあるそうで、閉校が決まって実施された商売体験学習の中で、髙進堂は学生たちが販売するための商品を提供し、仕事経験値の向上並びに母校での最後の思い出作りに貢献できたことは本当に嬉しかったとのこと。約50年寄り添い二人三脚で店を守ってきた豊子夫人も同様に地域に役立つことが幸せに繋がるようで、取材中は睦男氏の話にうなずきながら実に明るく楽しそうに作業をしているのが印象的だった。

 そんな地域に根付いた髙進堂も現時点では後継者不在なのだが、豊子さんが笑顔で言うには、福岡でサラリーマンをしている長男さんの後を継ぐ意思がゼロではなく、またお孫さんも将来やる仕事の選択肢の一つに入れてくれているとのことで、地元の人に愛される店舗や菓子は誰かが受け継ぎ残るべくして残っていくものだと感じた。

 大分県菓子工業組合事務局長・早瀬大雄