愛媛県レポート

2015.07.15

岐路に立つ菓子業界

お客さんに必要とされる菓子作りを

 先日、あるテレビのクイズ番組を見ておりましたら、フィリップス曲線という聞きなれない言葉を耳にしました。経済学でも勉強された方ならご存知かもしれませんが、私も初めて聞く言葉だったのですが、これは、縦軸にインフレ率をとり、横軸に失業率を取ったときに、インフレのときは失業率が極めて低いのですが、それがだんだんとデフレになるにしたがって失業率が高くなって、ちょうど反比例のような右肩さがりの曲線ができるのを、その法則を発見した経済学者の名前を取って、フィリップス曲線というのだそうです。これは、逆に言えば、デフレのときは失業率が高く、それがインフレになるにしたがって失業率が下がっていくということなのですが、今、アベノミクスでやろうとしていることがまさにこれで、今まで日本の経済はデフレ状態が長く、高校や大学を出ても就職先がないという憂うべき状態だったのを、デフレから意図的に少しだけインフレにもっていくことで、失業率を引き下げ経済を活性化していこうというのがアベノミクスだと思っています。

 そして、三本の矢とよばれる経済政策によって、確かに失業率が下がり、株価も2万円前後まで押し戻してきましたから、アベノミクス効果が出てきたのかなと思っておりますが、現実には本当に景気が良いのは中央の企業や、円安による輸出関連の企業で、その効果が時間差で地方の方にまではまわってきていないように感じております。

 先日もある新聞によると、現在、企業の倒産件数は確かに減少しているそうですが、しかし、逆に企業の休廃業は増えているのだそうです。やはり一番大きな原因は少子高齢化による後継者難だと思います。我々菓子屋の商売も、組合員が全盛期の半分以下にまで減少していまして、さらにその三割は後継者がいないという調査結果が出ておりますので、さらにお菓子屋さんの数が減少していくと、果たして組合が存続していくのだろうかと思い、危機感すら感じております。先輩のお菓子屋さんが言われるには、どんな時代になっても力のあるお菓子屋さん、お客さんから必要とされるお菓子屋さんは生き残っていくはずだ。数は少なくなっても、組合運営は可能だとおっしゃっていました。

 そういえば、私が京都で学生時代を送っているときに、バイト先で安土桃山時代の頃から続いているというお菓子屋さんの息子さんに出会いましたが、四百年も続くお菓子屋さんってどんなお店だろうと思い、立ち寄ってみると、本当に地味で落ち着きのある、私どもと変わらない小さなお店でした。ただ、お客さんが次々と入っていて、地元の方にも愛されているのがよくわかりました。

 以前、東京製菓学校の梶山校長先生が、儲かっているお菓子屋さんは、息子さんが100パーセント後を継いでいるとおっしゃっていましたが、この京都のお菓子屋さんのように、たとえ小さくてもお客さんから必要とされ、なおかつ儲かる商売を目指さなければと思っています。

 愛媛県菓子工業組合広報部長・白石恵一