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長崎お菓子歳時記 「和、華、蘭」のちゃんぽん

長崎ちまき 長崎と言えば観光と言うイメージもあると思います。確かにランタンフェスティバル、帆船まつり、あじさい祭り、精霊流し、そして長崎くんちと続きます。それぞれに菓子文化が有ります。それ以外にも桃の節句、端午の節句と大きくお菓子が動いていく時節が有ります。そこも長崎の歳時記の良いところで有ります。各地方にもそれぞれにすばらしい歳時記があり様々なお菓子が歴史と共に息付いているのではないでしょうか。

 元々長崎は、長崎氏が統率していた千五百人位の小さな町であったと言われています。長崎氏と大村純忠(日本初のキリシタン大名)によって1571年開港、キリシタンの町として始まり、貿易と共に幕府直轄の天領となり発展していきました。その中に、和の世界、中華の世界そして蘭の世界として特別な世界が生まれました。建物、食、スイーツ、情緒と長崎で俗に言う「和、華、蘭」の世界で有ります。この三つがうまい具合に長崎のちゃんぽんのように融合してその良さを長崎風にアレンジしながら、それぞれ単独のすばらしい事柄として輝やいています。今日少しずつ変わりながらもまだその魅力を存続させています。例えば、お雑煮のだしは昆布と鰹節、餅は丸餅と京風に近い、中国との交流があり、黄檗宗のお寺や唐人屋敷など、中国文化が入り、桃の節句や端午の節句など長崎風に、そして、ポルトガル、オランダの文化と同時に南蛮菓子、砂糖が入りすばらしいお菓子が誕生しています。

 三月の桃の節句には、お祝返しとして、命名や寿賀の祝にも長寿と災難除けとして桃のお菓子が使われます。五月の端午の節句にも男の子の出世を願い鯉のお菓子が使われます。又、この時季には屈原にゆかりのある粽が全国的に登場します。長崎の粽と言うと唐灰汁粽です。カンスイの一つで唐灰汁を使います。これは、長崎ちゃんぽん麺にも使われています。独特の風味と食感があり長崎粽の主流です。一般的には植物の葉などを使って作りますが、長崎の粽は円柱の木綿の袋に糯米を詰めて作ります。この粽、細長いので切って食べるのですが、金気を嫌いこれも木綿の糸で切り分けます。昔はなかった木綿、長崎だからこそ、貿易で入手した貴重な布を贅沢に使う事が出来たのかも知れません。

 長崎と言えば「長崎カステラ(長崎県菓子工業組合の地域団体登録商標)」がありますが、このカステラを進化させながら「桃カステラ(長崎県菓子工業組合の団体登録商標)」や鯉カステラなど様々なお菓子が登場しています。桃カステラ、鯉菓子などその時季に合ったお菓子が今でも沢山使われています。近年嬉しい事に、このお菓子が長崎にしかないお菓子として地方に長崎の良さを伝えようと発送が増えてきた事です。又これに合わせて発送できなかったお菓子も各店舗が試行錯誤しながら頑張っているとこです。長崎は440余年とまだ短い歴史では有りますが、長崎の良さを長崎の人に伝え残していく事はもちろん、砂糖や南蛮菓子が長崎街道を通って全国に伝わっていったように、全国に発信できる事を期待して行きたいと思います。

 長崎県菓子工業組合理事長・岩永徳二