福島県菓子店

2015.05.18

幻の「黒糖皮饅頭」を復刻して

かど屋(神山菓子店)

かど屋 当店「かど屋(神山菓子店)」は、福島県郡山市の東部地区に位置し、春になれば枝垂れ桜の名所として全国に知られた所でもあります。樹齢五百年の「紅枝垂れ地蔵桜」や「不動桜」があり、その咲き誇った姿を見ると、威風堂々とし貫禄を感じさせます。

 「かど屋」の屋号の由来を申しますと、この地には平安時代から伝わる瑠璃姫伝説の薬師堂や戦国時代の三春の武将田村義顕の家臣、高倉城主今泉山城守が、息災延命、子孫繁栄を願い、坂上田村麻呂を祀った田村大元帥明王社が建てられております。

 神山家は、代々造り酒屋を営み、三春藩に功績が認められ、文化二年には、苗字帯刀御免、城内竈頭職、十五石の禄高や商いの御用達を授かり、城内出入りを許されておりました。明治三十一年からは菓子司を開業し、店舗が由緒ある薬師堂や大元帥神社の入口に設けたことで「門屋」と称し、「笑門来福」の言葉を大切にして菓子業を営み、今日に至っております。

 現在の店舗の場所は、大正六年に街道の開通に伴い移転したとのことです。

 昭和五十一年には、店舗と工場を新築しましたが、製造機械等の導入で工房が手狭となり、作業効率を改善するため、平成二十六年に改築をしました。まず、熱ものと水もの、仕上工程と包装工程を分離し、さらに、自然換気にも気を使い、天井を高くして工房内の空気が自然と外に流れるようにしました。店舗内の改装は息子夫婦に全てまかせたので、若い感覚で仕上がり、全体的に老舗の雰囲気を醸し出し、お客様には入りやすく、少々高級感あふれる店でありたいとの息子夫婦の思いが実現した店舗に仕上がったと思います。

 次に、当店自慢のお菓子をご紹介します。初代神山今朝蔵が、試行錯誤の末、明治三十一年に考案して評判を呼んだ「黒糖皮饅頭」は、昭和初期まで造られていましたが、その頃から世界情勢が変わり、材料の入手が困難となると同時に、製法が難しいこの饅頭は造ることなく途絶えてしまいました。戦後、二代目神山正輔が菓子業を継ぎましたが「黒糖皮饅頭」の製造方法は伝授されず、造ることなく世を去りました。そのため、生前、正輔が話していた格調高い香りのする「黒糖皮饅頭」を復刻するため、妻ユミの僅かな口伝えの記憶を基に、材料の配合や製法を何年もかかってようやくまとめ上げ、約八十年ぶりに幻の黒糖風味の饅頭が復刻し、商品名を「和すけ饅頭」と名付けて製造・販売しており、お客様からもご好評をいただいています。

 その独特の美味しさや技術を代々伝授し、守り続けていきたいと思います。

 福島県菓子工業組合副理事長・神山修一